キャッシュフォーワークの必要性が叫ばれている中、民間で一早くキャッシュフォーワークを開始したNGOがある。国際ボランティアセンター山形は、4月上旬からキャッシュフォーワークを開始して、既に気仙沼・石巻にて50名近くの雇用を生み出している。「なぜ、キャッシュフォーワークが広がらないのか」、「実践をする中で分かってきた課題」と「今後に必要な支援」についてお伺いした。
--キャッシュフォーワークが朝日新聞に掲載されたり、様々な媒体に貴団体の活動が紹介されていますが、反響はありましたでしょうか。
国内外(朝日の記事は英文サイトでも紹介された)から、多くの反響がありました。その中には、大口の寄付の方もいらっしゃいました。これは多分、直接、時間を置かずに被災された方に届くという面が大きく評価されたのではないかと思います。
--キャッシュフォーワーク。被災者の方が仕事をしながら、経済活動に復帰していくという役割があるものですが、まだまだやっている所が少ないと感じています。このニーズ自体は実際にあるものですか。
キャッシュフォーワークの仕事はハローワークに求人を出しました。勿論、資金的な限界もあるので、現時点では、石巻・気仙沼在住の方に限定して実施しています(現在は地域を拡大していますので、お問い合わせください)。しかし実際には、随分遠くからも応募が来ました。岩手からも来ましたし、福島からも来ています。やはり、こういった活動が必要とされている証拠だと思います。
--それだけニーズがあるキャッシュフォーワークですが、なぜ広がらないのでしょうか。
NGO側の理由としては、団体で被災者の方と雇用契約を結ぶことになるのが難しいのかもしれません。IVYの場合は、気仙沼・石巻両方合わせて50人が当団体の臨時職員となっている訳です。「うちの団体の職員として働いていい」という形態を、思い切ってとれる太っ腹なNGOが少ないということではないかと思います。
--手続き自体もかなり煩雑だと思いますが。
手続きは実はそんなに大変ではありません。労災保険に入ること、ハローワークで事業所登録をすることなど、そんな難しいことではありません。大手であれば、既に海外でやっていることだと思いますので、実施していない理由は、別にあるということです。
--現在の形態だと、大きい規模になればなるほどリスクがあるということでしょうか。
雇用するリスクが大きくなることがある、と思います。また、キャッシュフォーワークが広がらない理由の一つは、莫大な資金がいることです。
--ホームページの記事を拝見していて、「資金が足りないとキャッシュフォーワークの継続が難しい」というのを目にしました。現時点でも、資金がもっとあればと感じることは多いでしょうか。「資金さえあれば、もっと多くの所に広げられるのに」「資金さえあれば、もっと多くの人を雇用出来るのに」という状況なのでしょうか。
勿論、そうです。これからどんどん雇用保険が切れる方が出てくるんですよ。9月で切れる方もいらっしゃいます。失業者数は増えることはあっても、減ることはないと思います。その人たちが生活保護に流れるのか、私たちは常にその方たちの動向を追っています。
ただし、資金さえあれば広がるという訳ではありません。キャッシュフォーワークを他団体がやらない理由には、組織の大きさが違うということもそうですが、東北に拠点がないということも大きいのではないでしょうか。拠点があるということは、リスクを察知・回避することが迅速に出来るということです。具体的に申し上げると、管理する人間が現場の近くにいるということです。IVYの場合は、理事2人が1週間に1回は現地に行っていますので、管理が出来ています。遠隔地にある団体が入っている場合ですが、臨時雇用をした職員を現地に送り込んでいる状況が見られます。特に大手の団体がそうです。
IVYのキャッシュフォーワーク事業では、「現地で臨時雇用した職員たちが、更に現地で作業する人たちを臨時雇用する」システムをとっていますが、IVYとしてどこまでマネジメントが出来るのか、ということが論点になります。私どもは管理が出来るのかという課題をクリアしているからこそ、この事業を実施している訳です。
あとは、現地に置いているコーディネーターのキャパシティがあります。当団体のキャッシュフォーワークでは、「このコーディネーターでは、今、雇用出来るのは20人がマックスだろう」というように状況を見ながら、徐々に雇用者を増やしていく訳です。徐々に増やしていった結果、ようやく気仙沼・石巻、それぞれで25人ずつくらいになっています。更にコーディネーターのキャパシティが上がるまで、ゆっくり待っている状態です。例えば、「気仙沼、30人雇える?」とコーディネーターに聞くと、「30人行けます!」と返事があれば30人に増やす、そういった形で増やしていくんですね。
コーディネーターの資質によっても、事業の流れは変わっていきます。コーディネーターの方が慎重なだと、なかなか増えない現状があります。それは、コーディネーターの方が大変だということも意味しています。仕事(各家庭の泥かき)も見つけてこないといけないし、依頼する家主も多く見つけて、働く人も探してこないといけない。だから、両方を器用に出来る人でないと、現地のコーディネーターは務まりません。そのマネジメントも重要です。
--資金だけでなく、コーディネーターの役割が重要ということですね。
資金があれば、何カ所かの市町村で実施したい訳なのですが、今度はコーディネーターのキャパシティが課題になってきます。5市になってしまうと、いけるかなと不安もあります。東松島市、南三陸町、女川町も候補に挙がっているのですが・・・。
実は、今、資金は持ってこれないことはないと感じています。旗を上げれば、世界中から資金が集まる可能性が高いです。受け皿を作りながら、同時にコーディネーターの更なるキャパシティビルディングも行っています。(注:7月に各コーディネーターと協議の結果、新たにコーディネーターを雇わず、地域を二つに分け、岩手県大船渡市、陸前高田市、南三陸町は気仙沼が、東松島市、女川町は石巻の各コーディネーターが担当し、事業を拡大していくことになった。)
--資金を獲得する中で、気を使っていることはありますか。
貰うばかりではなく、報告もしていく必要があります。100万円単位の寄付のドナーはたくさんの数に上ります。3月までの事業で1億単位で費用がかかります。何百人単位でいるドナーの方に細切れの報告をやっていくと、私たちの団体は破綻してしまいます(笑)。なるべくデスクワークを減らし現地に時間を割いていきたいので、「フォーマットを作り、3カ月に1回、報告をすること」で御了承頂きたいということをお願いし、ドナーの方とのコミュニケーションを取っています。「どれだけの方が雇用出来たのか」「再就職出来た方が何人いらっしゃるのか」「家主さんを何件見つけられた、どれだけの面積を綺麗に出来たのか」そういったことを報告することにより、ドナーの方に満足して頂けたらと考えています。報告をすることと、事業を実施していくことををうまく噛み合わせていくこと、これがなかなか出来ないこのが歯がゆいです。寄付金は勿論大事ですし、大変感謝していますが、それに伴う色々な報告義務が生じてきます。受け手側のキャパシティが問われる部分です。
--寄付をされている方で、どのくらいの頻度で報告をして欲しいなどのリクエストは入っていたりするのでしょうか。
アメリカからのドナーは10万ドル単位で寄付してくれている方が多いのですが、すぐ報告を欲しいという要望を受けるケースがあります。個人で寄付をされた方は「そんなに頻繁でなくて構いません」とおっしゃって下さる方がほとんどですが。ただし、ホームページ上などで、ある程度の報告頻度が必要だとは思っています。新聞などの取材は、非常に助かる部分があります。一つの報告として捉えて頂けるケースが多いので。
--キャッシュフォーワークは、「どのくらいの期間やらなくてはいけないのか」という部分もまだ見えないと思いますが、これからも莫大な資金は必要だと思います。これから寄付をする方にとって、この部分に配慮して欲しいということはありますか。
わがままを言わせてもらえれば、第一優先は被災者です。何を私たちが優先しているか、その事情を理解して欲しいと思っています。現地の管理や指導、コーディネーターが悩んでいることを一緒に問題解決すること。その次に、資金獲得です。ちなみに、現在は、私たち理事の多くの時間は金策に使われています。まず被災者があって、次に金策があって、その次が報告なんです。そこを理解して頂き、「報告に関しては、ちょっと待っていてください」ということをお願いしたいと思います。そういう限られた時間とマンパワーで動いている状況ですので、報告が上がらないということは、私たちも寝る間を惜しんで活動しており、現地で頑張っているということだと理解して頂きたいと思います。
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