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2016.08.02.Tue

大切なのは「忘れない」というキモチ

※この記事は、2011年9月取材した記事の再掲になります。

震災から9ヶ月が経った現在、まだまだ被災地での支援は続けられています。 今回のインタビューは東北で活動を続ける難民を助ける会の野際紗綾子さん。現在、難民を助ける会の東北事務所長として、東北でのプロジェクトの総括をしています。金融の世界から難民支援へと進んだ現在までのキャリア形成、取り組んでいる東北のプロジェクトについてお話をお聞きしました。

 

--金融機関から難民を助ける会に

もともと大学では国際関係学を勉強していました。そのころはアムネスティ・インターナショナル※という団体で活動していましたが、一度社会人として経験を積もうと考え、外資系金融機関のドイツ銀行グループに就職しました。

※人権侵害に対する調査と、独立した政策提言と、ボランティアによる市民の力に基づいて活動する国際的な人権団体

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金融のお仕事は激動の日々という言葉がぴったりの毎日で、すごく面白いものでした。商品開発やトレーダーが行った運用の評価などをしていて、やりがいもありました。ただ、日々の業務の中で、段々と疑問を感じることも増えてきました。例えば、ブラジルで暴動が起きて、株価が大きく下がったのをトレーダーが喜んでいたこと。あれ、これで喜んでいいものなのかなって。

意識を変えた大きな転機は9.11でした。実は9.11は私の誕生日で、高層ビルのレストランでお祝いしていたときにアメリカで9.11が起きたことを知りました。「富」の象徴といえる世界貿易センターに突っ込んだ側の人たちの「貧困」とはどんなものなんだろう、と問題意識が大きくなりました。自分はこのままでいいのかな、何かできることはあるのかなと。

その数年後には金融機関をやめ、結婚し、夜間の大学院に通い始めました。昼間が空いていたので、どうせだったら国際協力に近いことがしたいなと、たまたま入ったのが難民を助ける会でした。気がついたら難民を助ける会の仕事がどんどん忙しくなってきて、今にいたります。

--難民問題に取り組もう と思ったキッカケは?

高校時代は堅物な学生で、新聞委員会に所属していました。そのとき難民の存在を知って、興味を持つようになりました。すごく遠い世界のことを知ることが面白かったんです。他には学生時代に行った夏休みのボランティアで色々な人に出会ったり、1つ1つの忘れられない出来事が積み重なっていって、今の自分が創り上げられてきたのかなと思います。

--ハツカネズミのような支援を。

難民を助ける会の創設者相馬雪香は、以前インタビューで、「日本政府はゾウさんなの、私たちはハツカネズミのように活動しているのよ」と答えたことがあります。政府は大きな一歩をゆっくり出すので、私たちはハツカネズミのようにちょこまか動き回って、迅速な支援を提供する、という意味ですね。

この考え方は、東日本大震災の被災者支援においても、国庫補助金が出るまで体力がもたない福祉施設に対する支援などの私たちの活動に反映されています。私たちは政府と比べたら大きさも規模も違いますが、その中で私達ができることとして、取りこぼされる人を作らないよう、活動していきたいと考えているんです。

--被災地の方に喜ばれる支援とは?

震災から6ヶ月が経ち※取材当時、人々の関心はかなり低くなってきています。東京では東北がニュースに取り上げられることはずいぶん少なくなってきましたが、岩手や宮城では毎日まだまだ震災のニュースでいっぱいです。

そういう中でなんとか東北以外の地域と東北を繋ぎたいということから始まったのが『手作りトートバックで被災地を応援しよう』というプロジェクトです。これは、手作りのトートバックを日本全国から集めて被災地の方に送ろうという内容で、これまでに5000枚を超える手作りバッグが日本全国から集められて被災地に送られました。

お金を出すのは敷居が高いけれど、バッグなら何十枚でも作れるというお母様方もいらっしゃったり、丁寧な応援メッセージや手紙を書いたり、関心を持ち続けてくれる人がたくさんいます。バックを作った人たちはいろいろ思いが募るみたいで、長期的な支援を表明してくれるひとが多かったのです。

これは被災地の方にはすごく嬉しいことです。徐々に関心が薄れ、皆に忘れられてゆくのではと不安になる中で、これからも自分たちを支援してくれる人がいるんだと被災地の方々の安心につながるのです。

--大切なのは忘れないということ

ミャンマー(ビルマ)のサイクロンやパキスタンの水害など色々な災害に関わってきて感じるのは、人々の無関心が犠牲者を増やすということです。関心がないことで資金、人出、物資などあらゆるものが困っている方々の元まで届きません。災害時に命は助かっても、危機的な状態はその後も続いています。そこで適切な支援ができないと、犠牲者が増えてしまうのです。

--それぞれが出来る支援のカタチ

学生の方はいろいろと企画をしてみてほしいですね。実際に現場を見て、動いてみるという経験がその後の人生に活きると思います。企業では今プロボノが流行っていて、難民を助ける会にも会社の強みを生かしてお手伝いをしたいというお申し出もきて、ありがたいです。

どんなに小さいと思われることでも、10円の募金でも、1円の募金でも、皆さんの想いは、きっと届きますから。

 

野際紗綾子 (Nogiwa Sayako)

大学卒業後、外資系金融機関で働くも、「富」の対極にある「貧困」への問題意識が高まり、2005年4月より認定NPO法人難民を助ける会に転職。同時に、法政大学大学院環境マネジメント研究科に通い、2007年3月に修士課程を修了した。2008年ミャンマー(ビルマ)サイクロン災害、2009年スマトラ沖大地震、2010年パキスタン洪水等多数の緊急支援に従事。2011年の東日本大震災では、震災2日後から被災地入りし、東北事務所長として支援活動を統括している。

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