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2016.11.14.Mon

リディラバ(Ridilover)の障害者が働く現場をめぐるスタディツアーに参加しての感想。

「社会の無関心を打破する」をコンセプトに、様々な社会問題の現場をツアー形式で体験できるコンテンツ「Travel the Problem(トラベル・ザ・プロブレム)」を提供しているRidilover(リディラバ)。ずっと気になっていた彼らのツアーに、チャリツモメンバー3人で初めて参加してきました。この記事ではこのツアーで僕らが学び、感じたことをレポートにしてみなさんにご紹介します。
今回参加したのは以下のツアー。

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障害者の「働く」を支援する福祉施設を巡るツアー
福祉施設がどんな役割を持っていて、どんな人が働いているのか。身近にあるけど、実は知らないことが多く遠い存在と感じる人が多いかもしれません。

福祉施設の”支援をする”仕事。そして”できる仕事”を見つけていくことの大切さを福祉施設を見学や作業体験を通して、福祉施設の支援をする働き方に触れてみませんか。

日時:2016年10月20日(木)
場所:社会福祉法人いたるセンター他

WEBサイト:https://traveltheproblem.com/tours/116
FB:https://www.facebook.com/events/916248628449392/

なぜ障害者が働くのか。

ツアーでは、社会福祉法人いたるセンターの各事業部長と、採用・教育担当の方が案内役として参加者の旅をサポートしてくれます。まずツアーの最初の訪問地「いたるセンター 阿佐谷福祉工房」の会議室で、施設長が障害者福祉施設についてのレクチャーをしてくれました。

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レクチャーの内容

<社会福祉法人いたるセンターとは。>

昭和42年(1967年)に創立。今年で49年目。特別支援学校を卒業しても働く場のない知的障害者のために、就労を目的とした相談事業から始まった。
障害者が生まれ育った地元、安心出来る地域を離れることなく、自分らしく暮らしていけるように様々なサービスを1ヵ所で提供できる【複合型施設】を目指している。

 

<障害者が働くということ>

民間企業の障害者の雇用率 2.0%以上の達成を義務付けた障害者雇用促進法。しかし現在の企業の実雇用率は1.82%と目標に達していない。

その理由として、「障害者に出来る業務がない」「職場になじむのが難しい」という企業側の声がある。
そうした課題を解決するため、障害者が出来る仕事を見つける手助けや、障害者が仕事をするために必要なスキルを身につけるサポートをしているのが今回のツアーで巡る「福祉施設」。

障害者が働く意味は様々。
ひとつには、障害者の「自立」。働いて工賃をもらい、障害年金と合わせて自立した生活を送ることができるようにする。特に親が亡くなって行き場を失った障害者が、地元を離れ、遠くの施設に入所せざるを得なくなるケースが多いのだが、慣れ親しんだ地域を離れること自体が本人にはストレスになる。扶養してくれる親族がいなくなっても、生まれ育った地域で生活できるよう、自立・自活出来る能力を身につけることが大切。また働くことで社会や地域に貢献し、地域の人々とつながり、理解を深め合うこと(共生)が出来る。
また、なによりも障害者の人たちの「生きがい」になる。いたるセンターの福祉施設で働く人たちのなかには、一生懸命働いて、お給料が入ったときに自分が好きなアイスやお菓子を買うのが楽しみと言う人がいる。欲しいものを与えてもらうのではなく、自分で働いたお金で買うのが嬉しいのだと言う。

 

<福祉施設で働く障害者>

福祉施設で働く障害者はその障害の程度によって仕事の内容や工賃などが異なる。今回訪問する福祉施設では以下の4つの型にあたる人たちが働いている。障害の程度が重い順番に、

【生活介護】

常に介護が必要な人。介護を受けながら、働く。いたるセンターでは平均して月額3000円ほどの工賃を得ている。(全国平均は不明)

【就労継続支援B型(非雇用型)】

就労移行支援事業等を利用したが一般企業等の雇用に結びつかなかった人や、一定年齢に達していながらも生産活動にかかる知識や能力の向上が期待される人。雇用契約はない。

【就労継続支援A型(雇用型)】

企業等に就労することが困難ではあるが、雇用契約に基づいた継続就労が可能な65歳未満の人。

【就労移行支援】

就労を希望する65歳未満の障害者で、通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれるひと。
生産活動、職場体験その他の活動の機会の提供を受けたり、就労に必要な知識や能力向上のための訓練、求職活動に関する支援を受ける。
またその適性に応じた職場の開拓、就職後における職場への定着のために必要な相談、その他の必要な支援も受けている。

 

<いたるセンターが抱える悩み>

国は障害者福祉の方向性として、自立を促進するために働く障害者の工賃のアップを目指している。いたるセンターでも、人それぞれに相応しい仕事を安定的に用意するため、地域の企業を中心とした民間企業に仕事を受注できるように営業活動をしている。ただ、障害の程度ごとに適した仕事が、安定して受注出来てはいない。また案件によっては納期が短かったり、納入する数量(仕事量)が多かったりする場合、障害者の人たちだけでは完遂できないこともある。そうした仕事の場合は施設スタッフが残業をして仕事を終わらせなければならない。そうなると障害者の自立のための仕事が、健常のスタッフによってなされ、その分人件費のコスト増という矛盾が生まれる。

(1)阿佐谷福祉工房

レクチャーが終わると会議室を出てそのまま阿佐谷福祉工房の中を見学させてもらいました。この施設では「就労継続支援B型」と「生活介護」の人たちが働いています。たくさんのひとたちが、各階でグループに分かれてさまざまな作業をしていました。

仕事の内容は
・近所の公園の掃除
・シルクスクリーンプリントのTシャツ製造
・さをり織り
・防虫剤のパック詰めなどの軽作業
など。

まずは工芸品の袋つめをしていたグループを見学。みな集中して黙々と作業をしています。私たちが手元を覗き込むと、ちょっと恥ずかしそうに笑いながら、作業を続けていました。さをり織りと言われる織物を作っている部屋では、織り機を器用に使って、カラフルな織物を織っていました。

休憩時間みんながロビーでくつろいでいた際に、スタッフの方がそばの女の子を指して、「この子はコーラが大好きなんです。だからコーラのために働いているんですよ。ちなみに僕はビールのために働いています。」と言って彼女と笑いあっていたのが印象的でした。

 

(2)あけぼの作業所

次はマイクロバスで少し離れた福祉施設「あけぼの作業所」を訪れました。

あけぼの作業所はメンバー、スタッフ合わせて90名を超える大きな施設。設立以来地域とのつながりを大切に運営してきて、徐々に地域に溶け込み、今では作業所主宰のイベントに、地域の住人も数多く訪れるようになっているのだそうです。

ここではまず
・天然由来成分で作られた液体防虫剤のパック詰め作業
・さをり織りの工芸品の作業
・企業のダイレクトメールのチラシを何枚か折り込んでビニールに入れる作業
を見学させてもらいました。

ここで働いているのも「就労継続支援B型」と「生活介護」、そして「就労移行支援」にあたる人が就職に向けた訓練をしていました。

 

作業見学を終えたところで午前の部が終わり、昼食に。2階の食堂は午前の作業を終えた利用者(施設に通う障害者)たちで満席のため、食堂脇の個室でごはんをいただきました。メニューはグリーンカレー。ここあけぼの作業所では自主生産品(企業から受注する仕事でなく、自分たちで制作・販売するオリジナル商品)のひとつとしてこのグリーンカレーを缶詰にして商品にしているそうです。このカレーは食べてみて、その美味しさに驚きました。缶詰やレトルトはもちろんのこと、お店でもなかなか食べられないくらいの本格的でスパイシーなお味。ジャパンナイズされたグリーンカレーに魅力を感じない私ですが、このカレーにはかなりやられて、後ほど3缶ほど買い溜めました。

そんなこんなで昼食を終えたあとは、しばし休憩。利用者の人たちとおなじロビーで時間を過ごします。「話しかけられる事でびっくりしちゃったり、怯えてしまう人もいる」と事前に聞いていたので、特に話しかけることもなく、ベンチの空いている席に座って眺めていましたが、何人かの人が話しかけてきて挨拶を交わしたり握手をしたりしました。ロビーではたくさんの人が歌を歌ったり、スタッフに甘えたり、みんな思い思いの時間を過ごしていましたが、作業時間になった瞬間、誰が言うともなく皆ササッと自分の持ち場に戻っていき、ロビーがガランとなってしまったのには驚きました。

 

午後はあけぼの作業所で働く障害者の人たちと一緒に、作業を体験しました。ツアー参加者は2チームに別れ、一方は自主生産品である「メモ帳」づくり。もう一方はグリーンカーテンに絡まった「ゴーヤ」のツタを剥がす作業をします。

「メモ帳班」は利用者とツアー参加者が2人一組になって、メモ帳に挟み込むメモ用紙を数える作業をしました。作業は目の前の机に書かれた1〜10(ひとによって5枚まで)の番号の上に、メモ用紙になる小さい画用紙を並べていき、10枚並べたらそれを束にして端に重ねていくという作業です。利用者さんは、ゆっくり、一枚ずつ、数え間違いがないよう丁寧に置いていきます。とても簡単な作業なのですが、その真剣な顔つきから、緊張感が伝わってきて、10の上に紙が置かれると思わず「フーッ」とため息が出てしまう。そんな雰囲気でした。

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「ゴーヤ班」は力仕事です。あけぼの作業所では、グリーンカーテンの取り付けから管理、撤去作業まで一貫して請け負うサービスを、地域の希望者に向けて販売しています。この日は夏が終わり、各戸から撤去してきたグリーンカーテンに絡まっているゴーヤのつたを引き剥がす作業の日でした。利用者とツアー参加者でネットの端と端を持ち合い、ピンと張ったところで別の利用者さんがツタを引っ張ってネットから剥がすのですが、これが結構な重労働。ゴーヤの生命力を痛感させられました。

そんなこんなでそれぞれ作業しているところに、施設スタッフにつれて来られたのが「画伯」と言われる青年でした。終始ヘッドホンをしていて、言葉でのコミュニケーションはできなかったのですが、「この方は動物を描くのが得意なんです。みなさん好きな動物を描いてもらってください」というので、私たち参加者はおみやげにもらったメモ帳に思い思いの動物を描いてもらいました。画伯は私が「しろくま」を希望するとものの5秒で可愛らしい「しろくま」を描いてくれました。いじわる心で「アリクイ」を追加リクエストしましたが、コレもサクっと描き上げたのに感心していると、「この方は500種類以上の動物が頭に入っているんですよ」と言われて驚きました。

(3)パン工房PukuPuku

あけぼの作業所で作業体験をしたあとは、バスで移動していたるセンターが運営しているパン屋さん「パン工房PukuPuku」を訪れました。ここは天然酵母を使った、無添加のパンが並ぶ、おしゃれなパン屋さん。健常者に混じって「就労継続支援A型」の女性が働いていました。彼女は私たちが挨拶をすると、参加者一人一人に名前を尋ね、「〇〇さん、こんにちは!」と言って笑顔で握手を求めてくれる素敵な女性でした。焼きたてのパンに混じって、先程のあけぼの作業所で作られたグリーンカレーの缶詰も置いてあります。

 

(4)ワークショップ

最後は再び阿佐谷福祉工房に戻り、皆で1日の振り返りとワークショップを行います。8人のツアー参加者が2チームに別れて、各チームに施設スタッフ1名が進行役として入り、参加者同士が議論を行います。私のチームは「障害者が”働く”意義と施設の経営」をテーマに、今日体験して感じたこと、学んだことを踏まえて話し合いました。

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「障害者が”働く”ことの意義」に関して出てきた意見は以下。

・仕事を通して承認欲求を得たり、達成感を得たりすることで生きがいを感じていることがわかった。
・障害者を被支援者として捉えるのみならず、自分で賃金を得て消費や納税をして社会参画、社会貢献することができる人たちと考えることも大切。

「施設の経営に関して」は、固定した利用料や補助金で賄う経営で、苦境に立たされている施設を、どのような施策で救うことができるかを話し合った。出た意見は以下。

・現状施設が請け負っている仕事は子受け、孫請けの案件が多く、納期が厳しかったり賃金がやすい。できるだけ発注元と直接交渉して元請けとして受注するべき。
・受注案件の仕事よりも、タイカレーやさをり織りの工芸品のように、自主生産品の生産、販売を伸ばすべき。

 

考えるきっかけを与えてくれた旅を終えて。

今回参加したツアーで私たち8人の参加者は、障害者をめぐる問題の現場を訪れ、短時間ではあるものの当事者と同じ空間で、同じ時間を過ごすことができました。私は、施設の利用者がメモ用紙を1枚ずつ並べて行く作業を見守りながら、私にとっての「労働」を考えさせられていました。ただ紙を置いていくだけの作業ではあるのですが、彼らが1枚1枚真剣に、集中して、ゆっくりと動き続ける様に、私は「美しさ」を感じました。
果たして、私は自身の仕事に彼らのような真剣さを持って、取り組めているのだろうか。コーラやアイスやお菓子を楽しみにするように、自分の労働で得るものに心から喜びを感じ、楽しさを持って仕事ができているのだろうか。そんな事を今も考え続けています。

ツアーでは、福祉施設をはじめ、障害者福祉に関しては様々な問題や課題があることを知りました。私たちのために時間をかけて施設を案内し、障害者をめぐる問題について教えてくれた施設スタッフの方々。真剣に作業している現場を見学させてくれたり、一緒に作業を体験させてくれた施設利用者である障害者の方々。彼らのおかげで私たちは非常に貴重な体験ができたと思います。ただ、この体験は本来は特別なことではなく、当たり前に誰もが体験するはずのことなのではないでしょうか。日本にいる障害者といわれる人々は、身体障害者・知的障害者・精神障害者すべて含めて約738万人。日本の人口の6.7%が何らかの障害を持っている人々です。決して少なくない人数にも関わらず、私たちは障害者と接する機会は少なすぎるように思います。

私たちは今回のツアーの中で、生き生きと働く障害者を見て、障害者が働く意義を実感しました。それは彼らの生きがいであり、経済活動を通して地域とつながり共生することでした。
さらに、障害者が働くことは、健常者(と言われる人々)にとっても有意義なことでしょう。日本は今、超高齢化の時代を迎え、現在でさえ現役世代2.3人で1人の高齢者を支えている状況が、2060年には1.3人で1人を支える社会が来ると言われています。社会が衰退する中で、福祉に当てられる財源に対してシビアにならざるを得ない時代背景で、障害者が働いて自立していく事は大切なことだと思います。

 

働くひとびとを見ていて、「働けないひとびと」のことを考えた

しかし、私は同時に、「働きたくても働けない障害者がたくさんいる。家から出ることもできず、社会と交わりを持てない障害者も、見えないけれど確実にいる。」そのことも考えさせられました。今回見てきたような「労働」できる能力を持つ障害者は全ての障害者の中の一部です。世の中には「仕事をすることができない」障害者の方もたくさんいます。私たちは「障害者でもその人にあった仕事をし、社会に貢献しているから価値がある」とか、画伯のように「特別な能力をもっているから価値がある」とか、ともすれば人の個性と社会的な価値を結びつけてしまっていないだろうか。そうした視点で世の中を見てしまうと、「どんな仕事もできず、なにも生産できずにいる人たち」を差別したり、排除したりする価値観が加速してしまうのではないだろうか。そんなことも考えさせられました。
そして、これは何も障害者に限った話ではなく、「障害者」を「高齢者」に置き換えて考えることもできると思います。私たち全員が逃れられない「老い」をどう捉え、老いて働けなくなった人々が多数を占めていくこれからの高齢化社会に、私たちはどう向き合って行くべきなのか。

私はそんなことを考えているときに「生産できない、経済活動に関われない人たち」を社会が包摂し、守りつづけるために必要なものが「人権」なのだと気づきました。これまで私は「人権」を人が当然持っているものであり、誰にも侵害されない権利だと言葉面ではわかっていながら、その「人権」がどういうものなのか、なぜ必要なのかということを真剣に考えたことがなかったという事に気付かされたのです。

このツアーTravel the Problem(トラベル・ザ・プロブレム)を運営しているRidilover(リディラバ)は、彼らの理念の中にこう書いています。

「あたりまえだから」という言葉をよく耳にします。
あたりまえ、と思ってしまった瞬間に、考えることをやめてしまう。
それは、この社会に大きな無関心の構造をつくりだしているのではないでしょうか。

今回私は彼らのツアーを通じて、”あたりまえ”にわかったつもりでいた「人権」というものについて、改めて考えさせられ、また、これからも考え続けなければいけないと感じさせられました。

1人ひとりが、「あたりまえ」に捉えてしまっていること、それをもう一度考え直してより深く理解するきっかけになる旅。そんな旅に、あなたも参加してみてはいかがでしょうか。

 

Travel the Problem(トラベル・ザ・プロブレム)
https://traveltheproblem.com/tours/116

FBイベントページ
https://www.facebook.com/events/916248628449392/

 

ライター: