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2017.06.16.Fri

児童養護施設の子どもたちのための奨学金プログラム『カナエール』、今年が最後の開催です。

最後のカナエール・夢スピーチコンテストが、7月に東京・横浜・福岡の3ヶ所で開催されます。
本番の舞台に立ち、来場者みなさんの顔を見渡した子どもたちは「こんなにたくさんの人に応援してもらってるんだ。がんばらなきゃ。」という気持ちになれるんです。
あなたの応援が、彼らの力になります。ぜひ、足をお運びください。

カナエールを運営するNPO法人ブリッジフォースマイルの植村百合香さんは語る。

いま全国で約3万人の子どもたちが、児童養護施設の中で暮らしている。
施設に来る理由は、家庭の経済状況や虐待、親の精神疾患に身体的な病気など様々だ。しかし、子ども達は似たような課題を抱えているという。

児童福祉法では満18歳未満を「児童=子ども」とし、社会的養護(※1)の対象と定めている。
若者たちは18歳を迎えるとともに社会的養護の対象ではなくなり、一部をのぞき高校卒業と同時に児童養護施設を退所して自立を余儀なくされる仕組みになっている。
社会に出て、頼れる親や家族がいない彼らは、生活するので精一杯。大学や専門学校への進学率は全国平均の約3分の1という状況だそうだ。

そんな中、2011年にNPO法人ブリッジフォースマイルが始めたのが、彼らの進学を応援するための奨学金プログラム『カナエール』だ。
「カナエール」は、児童養護施設の子どもたちが自分の「夢」について語るスピーチコンテストに出場することを条件に、返済不要の給付型奨学金を付与するプログラム。主役となる彼らはボランティアの大人3人とチームを組み、120日間のプログラム期間中、スピーチの作成や練習を重ね、コンテスト本番では、多くの来場者の前で自らの夢を語り、応援を募る。

このプログラムの着目すべき点は、自分の将来を切り拓くための「奨学金」を手にするとともに、大人たちとの関わりの中で自立して生きていく「力」と「意欲」を手に入れられることだろう。現在までに124名の奨学生を迎え、合計1億4300万円の奨学金を給付することになる。

今年で7年目を迎えた「カナエール」だが、来月7月に開催されるスピーチコンテストが最後の開催となる。
そこで今回、主催するNPO法人ブリッジフォースマイルの植村さんに、カナエールが果たしてきた役目やラストステージにかける思いなどを伺った。

カナエール公式WEBサイト

大人としての権利も、子どもとしての公的支援もない。
親や家族に頼れぬまま、自立を促される18歳。

まずはブリッジフォースマイルの活動について教えてください

私たちブリッジフォースマイルは、児童養護施設の子どもたちの自立支援をする団体です。
児童養護施設では2歳から18歳までの子どもたちが暮らしていますが、私たちは中高生〜退所後の若者など“18歳前後の子どもたち”への支援活動に力を入れています。

一般的には社会的養護の子どもたちは、ずっと施設にいるものと思われがちですが、実は施設に入る子どもたちの平均在所期間は約5年です。
虐待や親の病気など、施設に入れられる理由は様々ですが、親元が安定し、調整がつけば、子どもは家庭に戻ります。

施設で18歳を迎えるということは、社会に出なければいけない時期になっても、家庭復帰が望めなかったということです。
民法上の成人年齢は20歳ですから、18歳の彼らは大人(=成人)でも子ども(=児童)でもないという不安定な立場のうえに、親や家族を頼れずに自立を迫られるんです。
この18〜20歳の不安定な時期に困難に陥る子どもたちが多いので、私たちは18歳前後に対象を絞り、施設を出る前の自立のための準備、施設を出たあとのつながりを大切にしています。

親も家族も頼れずに社会に出た彼らには、どんな困難があるのでしょう。

保護者の同意や保証人が必要になる契約全般は、まず最初の大きな壁となります。
例えば携帯電話一つ買うにしても、未成年者は自分で携帯電話の契約が結べません。親の同意が必要です。
家を借りる際も、一般的には親が保証人になるパターンが多いと思いますが、彼らは保証人を探すのに苦労します。
本人が未成年でありながら親が不在ということから生じる問題は、その他にも多々あります。

進学率は全国平均の約3分の1。中退率は約3倍。

施設出身者の進学率はどのくらいですか

高卒後の進学率は極めて低く、全国平均の75%に対して、施設出身者は23%です。(※2)
その最大の理由は「お金」です。
子どもたちは退所後の生活費も進学後の学費も全て自分自身で工面しなければなりません。
施設の子どもが「進学したい」となれば、高校在学中にアルバイトで百万円近くのお金を貯めることが目標になります。

施設職員の方々が恐れているのは進学後の中退です。進学できても学業とアルバイトの両立は厳しく、経済的理由等により中退してしまう割合は25%と、全国平均の3倍近くにもなります。((※3)

いまの日本では、学校を中退してしまうと正規職員としての就職が難しいですから、施設職員も「進学しなよ」とむやみに背中を押せない状況なんです。

高校求人は未だにあり、よっぽどでなければ就職はできるので、8割近くの子どもたちは高卒で就労します。

地域間格差と施設間格差。
場所や環境で将来が左右される子どもたち。

東京と地方では差はありますか

地域間の格差は大きいです。
東京には全国の施設の1割が集中していますが、進学率は3割ほどと全国平均を上回ります。東京都は予算が手厚いのに加え、塾の選択の幅が広かったり、学習ボランティアが集まりやすかったりと、学習環境も恵まれているんです。

問題は地域間の格差だけでなく、施設間の差が大きいことです。
児童養護施設は母体が様々で、運営方針もそれぞれ違います。独自の基金などを持ち、奨学金を全部出せるよという施設もあれば、大学進学者をまだ出したことがないという施設もあったりします。
自治体からの予算は一定ですが、予算の対象にならない支出は、施設の財政状況や方針によって左右される部分があります。生まれた環境もそうですが、育つ環境も子ども自身では選べないというのが現状です。

私たちブリッジフォースマイルは“橋渡し”を掲げる団体ですが、2つのミッションがあります。
1つが「社会と施設のギャップを埋める」こと。2つめが「施設間のギャップを埋める」こと。
その2つのギャップを埋めて、それぞれの橋渡しをしたいという思いを“ブリッジフォースマイル”という名前に込めています。

「無責任に夢を応援しないで」という施設職員からの声が始まりだった。

カナエールを始めた経緯を教えてください。

活動初期の頃ですが、ブリッジフォースマイルのボランティアが、子どもとの活動中、将来の夢を語った子に「あなたならきっとなれるよ」と言って励ましたことがありました。それを知った施設職員から「無責任に夢を応援しないで欲しい。私たちが、諦めさせなければならないんですよ。」と言われたのです。
この言葉が、カナエールが生まれるひとつのきっかけでした。

職員の方は、子どもの理想と現実をすり合わせなければなりません。
大企業でバリバリ働くビジネスマンになりたいという夢を叶えるのにも、一般的には大学卒業の資格が必要です。
保育士や看護師になりたいという夢も、学校に行かなければ資格を得られず叶えられません。
頼れる親も家族もなく、児童養護施設から巣立つ子どもたちが進学、卒業を果たすには大変な努力がいる。施設の職員は子どもたちの生活を考えて、子どもによっては、夢とは違う道を見つけてあげなければならなかったのです。

「たしかに、いまは進学を勧められる手段は持っていない。」その気づきが、奨学金を設立しようというきっかけになりました。

当時、施設出身者向けの奨学金は数が少なく狭き門でした。奨学金に加え、我々が得意とする社会人ボランティアとの関わりや、卒業までどうしたら意欲を持ち続けてもらえるか、「意欲面の支援」を特徴にして生まれたのがカナエールです。

7年間を振り返って、カナエールの意義とは?

児童福祉としては、衣食住を与えて健全な育成を支えることが基本となります。親と暮らせない子が、安心して生活できるようにすることが大切です。

一方、環境を乗り越えていくには何かに挑戦したり、試練に打ち克つ経験も必要です。
「チャレンジを乗り越えることで、成長する」仕組みがカナエールなんです。

“与えてもらえる環境”の中で、ずっと生きていくことはできません。いずれ、社会の荒波にもまれる時がきます。

社会で直面するいくつもの壁に立ち向かう力をつけてもらい、夢を叶える力を育むため、施設から社会へのステップとしてカナエールを使ってもらえればという気持ちです。

カナエールの奨学生たちは、最初は「奨学金をもらうための条件」として、仕方なしにスピーチコンテストに参加する子が多いです。職員に勧められても、泣いて嫌がる子もいる。それでも終わった後は「参加してよかった」という感想をたくさんもらいます。

7年間で社会が変わり、施設出身者向けの給付型奨学金ができた。
一定の役割を終え、最後の舞台を迎えるカナエール。

今年で最後とのことですが、なぜ終わるのでしょう。

理由はいくつかありますが、まず国が施設出身者向けの給付型奨学金を制度化したことです。
カナエールを立ち上げた当初から「国が始めたら終わりにするかもね」とメンバーで話していましたが、それが7年目で実現しました。

昨今の子どもの貧困への問題意識の高まりや、給付型奨学金の必要性を訴える世論を背景として、児童養護施設出身者への奨学金という分野でも大きな動きがありました。
学生支援機構の中に給付型奨学金が新設されることが決まり、施設出身者も比較的もらいやすい枠ができたんです。

奨学金を国が用意するというのはとても大切なことです。
今まで自治体ごとの奨学金はいくつかありましたが、多くの場合、県内の学校に進学しなければいけないというような制約がありました。
国が開始する給付型奨学金は、地域をまたいだパスポートになり、子どもたちの選択肢を大幅に広げる可能性を持っています。

社会が少しずつ変わり、施設出身者が使える奨学金が増えてきたことで、カナエールはひとつの役割を終えたのだと思います。
NPOとして、この先に必要とされる支援を探っていき、カナエールで培った「意欲面の支援」を強化させていければと、まだ構想中ですが次を考え始めている段階です。

最後のカナエール。
あなたの応援が必要です。

最後に伝えたいことは

最後のカナエール・夢スピーチコンテストが東京・横浜・福岡の3ヶ所で開催されます。
これまでカナエールを応援していただいた方はもちろん、今までカナエールを知らなかった人や、児童福祉の世界に関わったことがない人に、ぜひご来場いただきたいと思っています。

本番の舞台に立ち、来場者みなさんの顔を見渡した子どもたちは「こんなにたくさんの人に応援してもらってるんだ。がんばらなきゃ。」という気持ちになれるんです。
あなたの応援が、彼らの力になります。ぜひ、足をお運びください。

あとがき

来月、7月に行われる東京・横浜・福岡の3会場のスピーチコンテストをもってプログラムが終了する。
僕も最後のスピーチに立ち会い、彼らの夢をしっかりと受け止めたい。
コンテストの詳細はカナエール公式WEBサイトよりご確認ください。

カナエール2017・夢スピーチコンテスト開催概要

カナエール2017夢スピーチコンテスト 横浜会場

◆日時:2017年7月1日(土)13:00~16:30(12:30開場)
◆会場:鶴見公会堂 神奈川県横浜市鶴見区豊岡町2−1

横浜会場の詳細はこちら

カナエール2017夢スピーチコンテスト東京会場

◆日時:2017年7月8日(土)13:00~16:30(12:30開場)
◆会場:ニッショーホール 東京都港区虎ノ門2丁目9−16

東京会場の詳細はこちら

カナエール2017夢スピーチコンテスト 福岡会場

◆日時:2017年7月9日(日) 13:00 開演 17:00 終了
◆会場:北九州 黒崎ひびしんホール 大ホール

福岡会場の詳細はこちら

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