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ツアーの根底から見えたもの〜3つの視点が重なる部分〜【リディラバ R-SIC2017 スタディツアーレポート(2/2)】

3つの視点からツアーを振り返る

スタディツアーに参加したあと、どうしても知りたくなったことがある。それは、どんな人が、どんな意図で、このツアーを企画し、つくりあげたのか。そして参加者は一体何をヒントとして持ち帰ったのかという興味だった。

そこでインタビューを敢行することにした。ツアーの企画者に加え、ツアーの訪問先、そして参加者がそれぞれの立場でツアーを振り返ってもらった。

ツアー企画者の視点

一般社団法人リディラバ
武村佳奈さん

リディラバでインターンをしている武村さんは、大学を休学し、社会問題に対して自分なりの“無関心の打破”を広めていくために、ミス・ワールド、ミス・インターナショナルに出場するなど幅広く活動している。(詳細は【R-SIC2017】リディラバ スタッフインタビュー参照)

今回のツアーはどんな思いで企画したのですか?

ツアーの舞台である「タガヤセ大蔵」には、地域を良くするためのヒントやアイディアみたいなものは沢山ありました。
なので、コミュニティに触れてもらって「自分だったらこんなことが出来る!」を見つけて、実際に行動して欲しいなと思っていたんです。
だから、タガヤセ大蔵の安藤さんと話していた裏テーマは、「Be the change~あなたが思う変革者に、あなた自身がなってください~」でした。

ツアー名の中にある「地域の分断」とは?

個人的な気づきから生まれた言葉なんです。
上京してしばらくしたある日、ゴミ出しでお隣さんに迷惑をかけてしまったことがあるんですが、そこで私は手作りのブラウニーを持ってお詫びに行ったら、なぜかお隣さんに怪訝な顔をされてしまったんです。
私は悪いことをすれば近所のおじさんにも本気で怒られるような奈良の田舎で育ってきたので「ここは同じ日本なのか?」と思いましたね。
こうした経験から、地域の中に分断があると感じ、意識しています。

ツアーでは分断をつなぎ直す役割をするのが“コミュニティ”ということでしたが、武村さんが考える“コミュニティ”とは?

いろんな人がいろいろなことを持ち込み合って発展していく場、というイメージです。
リディラバ代表の安部も「社会変革はカフェでの会話から始まる」とよく言っています。
その場でのフランクな会話の中で「あ、それ私も問題だと思ってた!じゃあなんかやろうよ」って始まるアクションがたくさん生まれるような場がもっと広がればいいなと思っています。

ツアー帰りのバスの中では、参加者同士が仲良くなって活発に意見交換をしていましたね。

コミュニティを見に行って、帰りは自分たち自身が「コミュニティ」になっていましたね(笑)。
新しい“なにか”が生まれる瞬間の、すごくわくわくする光景でした。

タガヤセ大蔵オーナーの視点

大家さん
安藤勝信さん

ツアーでのお話では何をしたかということだけでなく、どういうマインドだったかという根底にあるものを話してくれた。時間をかけてつくる安藤さんなりの人のつなげ方は、タガヤセ大蔵に集う人々の心地いい関係を生みだしているようだ。

参加者にこう感じて欲しい、みたいなものはありましたか?

よく人から言われるんです。“安藤さんだから”とか“世田谷だから”できるんでしょとか。
たしかにここでのことは僕にしかできないかもしれないですが、それぞれの社会課題というのは、その人だからこそ解決できる個別事例の集合体だと思うんです。
だから、このツアーでも、自分だからできることは何かを考えて、ぜひ持ち帰ってもらえたら嬉しいなと思っていました。

あと、組織化や仕組化しないあり方に、“もやもや感”を感じて欲しかったです。

どうして“もやもや感”を感じて欲しいのですか?

いま、組織体制や上下関係などのしがらみに疲れて来てるから、新しい関係や有機的なつながりにも興味を持ち始めていると感じています。
組織や仕組みに属していてもいいとおもいます、その一方でそうでないあり方の小さなトライをしてみる。
ビジョンは?ミッションは?目的は?ターゲットは?といういつもの会話からすこし離れて自分の本当にやりたいことに素直になってみる。もちろんビジョンもミッションも大切なことではあると思うのですが…。

組織化・仕組化しないコミュニティをつくっていく際に大切にしていることはなんですか?

部屋を探している人に、「コミュニティがここにありますよ!」とはあまりいわないですね。
もちろん物件写真にバーベキューをしている様子を写してそれっぽい雰囲気は見せたり、地域の人たちと自然とつながりたくような仕掛けを考えたりはしているんですが、「コミュニティが売りです」とは言わないようにしています。

それは意外ですね。

コミュニティは、強制されて気持ちいいものでもないと思うんです。。
それぞれのひとが主体的に行動したいと思わないと、それはお仕着せだと思うんですよ。タガヤセ大蔵での交流もお仕着せにならないよう気をつけています。
デイサービスの利用者と保育園の子どもたちが交流できるといいのになと思っても、強く促すようなことはしません。
交流が起きたときのためにブランクスペースを準備しておくだけ、さぁどうぞとおもちゃを用意したりはしない。
だから見守っていて、いつかタイミングの合うときに始めればいい。

参加者の視点

このツアーには「まちづくり」「コミュニティ」「介護」「空き家リノベーション」というキーワードに興味を持った職業も年齢も幅広い23名が参加した。ツアー終了後、参加者は何を感じたのだろうか。

安藤さんのお話の中で、ここがポイントだった!と思う部分はありますか

  • デイサービスでのイベントを子供たちやその親を巻き込んで、食と絡めてやっているのが上手だなと思いました。“食”が常にあったのは大事ですね。食べ物を食べるとほっこりするから楽しい雰囲気になる。
  • 今回のツアーはあくまでも楽しくやるという、その楽しい“場”に人が集まるというところがポイントになっていたと思います。「分断」というけれど、何かをする時に楽しくできないと分断が起こりやすい気がします。
  • 誰かが何かをやりたいと言えば、それをみんなでバックアップするのが、このコミュニティ内での共通認識とのこと。(ここには)組織というものが無くてフラットな状態だということが印象的でした。
  • 組織化していないということに少し驚きました。でも言われてみれば、仕事では組織でがんじがらめにやっているので、プライベートでは組織化せずに、やりたい人が主体的にやると楽しいまちづくりになるのではないかと思いました。
  • 介護に焦点を当てたツアーかと思っていたけれど、想像していた以上に複合的で面白い取り組みでした。
  • 場を貸すだけでなく、先に借り手を見つけた上で、一緒に部屋を作り上げるというスタンスは今ある賃貸の常識も変えていると思いました。
  • 今回は課題があまり見えず、成功から学んだという感じです。失敗例もあるということでしたのでその部分も聞いてみたいですね。

タガヤセ大蔵というコミュニティに触れて今後、ご自身の活動に生かせそうな“ヒント”は何か見つかりましたか?

  • 私は行政で働いているんですが、その規制の壁を行政とどのようにやりとりし、乗り越えたかというお話が参考になりました。なかでも「スピード感」が大事だということですね。
    たしかに行政は協力してくれないと町民の皆さんからよく言われてしまいますが、もし規制の話や行政がらみのことが出てきたら、積極的に私は窓口となって地域を良くするために一緒になって解決していきたいです。
    今までとは違ったやり方で、スピード感をもって対応していきたいと思いました。
  • 今高校に通っていますが、4月から大学の福祉学科に進みます。
    今日のツアーの中ででてきた「福祉=幸せ」という言葉が自分の中で一番響きました。
    おじいちゃんおばあちゃんの介護に苦しんだ経験と保育への関心があり、これまで福祉を大学で学んだり、将来仕事としてやるっていうことに対して突っかかりみたいなのがありましたが、おかげで4月から始まる福祉学科で頑張ってみようという気持ちになりました。

3つの視点から見えた!ツアーの魅力とアクションのヒント

こうしてそれぞれの視点で振り返ってみると、今回のスタディツアーの裏テーマであった”Be the change”と、参加者のフィードバックには重なる部分があるということに気づく。その重なる部分が、このツアーの価値であり魅力のひとつだと思う。

”Be the change”。
社会課題に対してアクションを起こすことは難しい。でも、安藤さんが空き家を福祉施設しようとしたきっかけが、介護が必要な祖父の存在であったように、「自分にとって身近な、大切な人が笑顔で暮らせるようにしよう」と考えてみると、目の前の小さなことからでも何かしらの工夫ができるようになる。タガヤセ大蔵の取り組みも、誰か近くのひとを笑顔にするための“ちょっとした工夫やアイディアの積み重ね”だった。

今回ツアーを通じてコミュニティに触れてみて予想外だったことがひとつある。それは幸せとは何か、自分らしい生き方とは何だろうかなどを考えるきっかけが多かったことだ。
このツアーは誰でも参加できる。まちづくり・コミュニティ・介護・空き家・リノベーションといったキーワードに興味あるひとはもちろんだが、人とのつながりを模索しているひとや、現状の生活にモヤモヤしているひとにもぜひ参加してほしい。何かヒントをもらえるはずだ。

このツアーの詳細は下記を参照してください。

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