Loading...
2016.09.14.Wed

“夜の世界”の孤立に立ち向かう/風俗嬢のセカンドキャリア支援を続ける Grow As People 角間惇一郎さん インタビュー(2/2)

風俗嬢へのセカンドキャリア支援事業など、性風俗業界に関わる人々に寄り添い、彼らが抱えている問題解決に取り組むGrow As Peopleの代表・角間惇一郎さんへのインタビュー。前回は角間さんが性風俗業界の問題に取り組むきっかけや、実際に性風俗業界に身を置くことで気づいた“40歳の壁”、また風俗店が持つ膨大なデータを社会資本として活用するアイデアなどをお聞きしました。今回はGAPが手がけているセカンドキャリア事業に焦点を当て、具体的にどのような支援をしているのかというお話と、GAPの事業展開や団体運営においてのポリシーなどをお伺いしました。

前回の記事を読む(1/2)

 

GrowAsPeople代表・角間惇一郎さん

GrowAsPeople代表・角間惇一郎さん

 

風俗の問題は、ニートや引きこもりに近い

GAPが提供するセカンドキャリア事業についてもう少しお聞かせください。
この事業でサービス提供をしている女の子たちに共通した問題として、“40歳の壁”や将来への不安があると思いますが、その他日常的に抱えている問題はありますか?

風俗の問題でよく言われるのは“貧困”ですよね。たしかに貧困で困っている子もいっぱいいる。でも僕が見てきた女の子たちの場合はそうではなくって、どちらかというとニートや引きこもりの問題に近いように思います。今までいろんなNPO領域見てきましたけど、かなりニートや引きこもりに性質が近いと感じます。性や貧困の問題よりも。

風俗って良くも悪くも稼げちゃうんですよ。だいたい月平均12日の出勤で、30〜40万円の収入の子たちが多かった。これは数千レベルでデータをとっているので間違いない。じゃあ、残りの18日なにしてんの?って言うと、5日くらいは生理期間で休んでて、じゃあ残り13日何してんの?って言うと、結構ニート気味なんですよ。なんでニートしているのかっていうと、お金はあるし、でも外に出て“バレたくない”から引きこもっててもいいやって。構造的に引きこもりに近いですよ。

 

お金を稼いでも、特にやりたいことやほしいものがない?

機会がないんですよね。なにしていいかわからない。だから働き方論とかともちょっと近いですよね。結局お金や時間はあっても、コネが無かったり、機会が無かったりすれば、新しい知見が得られなくて閉じこもったままになる。とりあえず本でも読んどけって言っても、何読んでいいかわからないし。ってそういう人が多いんですよね。だからこそ、女の子たちが安全に参入できてかつ、続けられるように多少強制力のある機会を提供してあげるというのがセカンドキャリアの事業なんです。

 

具体的には企業やNPOへのインターンなどの機会提供ですね。

そうです。実際にはつながりのあるNPOに送り出すことが多いですね。NPOに行くと何がいいかって言うと、団体の側に理解があるので、身バレしても安心なんですよね。

先ほど愚痴っぽく日本社会のなかでは所属や立場が重視されると言いましたが、やはりそれは否めないし、そんな社会慣習の中で風俗後の次のキャリアにつなげるしかない。そのためにNPOで半年〜1年ほど働く。社会的な立場を手に入れて、コネもできる。フリーターの人たちなどと違うのは、ある程度お金と時間に余裕があること。NPOで働くことでお金を欲しいというわけではない。これは大きなアドバンテージです。

また大切な“時間”を無駄にせずに、自分の進むべき道を探す事が出来るというのも大きなメリットです。「介護業界に行きたい」と言って、風俗でお金貯めて卒業、介護業界に入ったけれど、結局「こんなはずじゃなかった」って戻ってくるケースも死ぬほど見てきました。風俗やってると、そういう人を見るのが一番切ない。戻ってきた時には、歳とっちゃってるんですよ。卒業時に25歳くらいだったのが、29とか30になって戻ってくる。もちろんその分仕事もしんどい。それだったら25歳の時に、風俗卒業前に介護を経験すればよかった。彼女たちは時間があるからやれるはずなのに、やらない理由ってなに?って聞くと(風俗をやっていることを)バレたくないっていうわけなんです。だからバレずに(バレても)安心して経験できる機会を作ってあげたほうがいいはずなんですよ。できるだけ早く。

僕らは結局風俗を辞めさせたいと思っているのではなく、時間があるうちに次の道や自分の適性に気づかせてあげたいだけなんです。自分の興味のある分野を経験してみて、でも結局「向いてないからやーめた」でもいいんです。今気づけたんだから、それはある意味正解なんです。

 

“身バレ”を恐れてひきこもりながらも将来への不安を抱える女の子たちに、“身バレ”を気にせずに社会的立場と就労経験を与える事業。確かにこれはすごくニーズがありそうですね。

そういう意味で僕らの一番のライバルって有料の通信制講座なんです。風俗辞めたくなった女の子たちはみんな通信制講座を始めてるんですよ。なんでかっていうと理由はシンプルで、“バレずにすむ”からって。あと“資格”ってなんか変わった気になるから。だから僕たちは通信制講座以外の選択肢を社会に作りたいと思っているんです。

とは言え今僕らもサービスの仕組みを変えようとしていて、考えているサービスはどちらかと言うと“保険”みたいな仕組みです。毎月お金を払ってもらって、何かあったら相談事業もする。例えば店とトラブったとか客とトラブったとかってときに相談に乗るし手助けもする。そして辞めたくなった時には職歴つけられる経験を提供するっていう。

 

それは安心ですね。私がもし女の子の立場だったら入りますね。

安心でしょ!僕らはお店との関係も築いてるので、入店した時に、その保険に一緒に加入してもらうってこともできるかなと考えています。

 

GrowAsPeople WEBサイト

GrowAsPeople WEBサイト

 

気付いちゃった者の責任。

風俗の仕事に関する是非論とかそういった観念的なものに触れずに、現状分析と課題解決の合理的手法を考え続ける事が角間さんのある種のポリシーかなと思います。そういった考えはもともとあったのでしょうか?

結局なにが正しいなんてないじゃないですか。僕の今のスタンスっていうのは、建築業界にいたのが大きいかな。設計事務所とかそうなんですけど、クライアントからの依頼は100パー絶対なんですよ。例えば三角型の土地に家立ててって依頼がくる。しかも豪邸を建てたいと。予算2000万以下で。そこで予算もないし、土地も良くないからダメですよとか言ったらそれは設計者として失格で、その条件の中でできる最大の豪邸をリデザインしなきゃいけないんですよ。この場合は例えばクライアントの言う“豪邸”を再定義してもらって、豪邸とは“広い”ことなのか、“明るい”ことなのかって聞いて、「人がいっぱい来て明るいこと」っていうんだったら、極端な話壁面をすべてガラスにしちゃうとか。それならとりあえずその条件の中での豪邸ってできるわけじゃないですか。そういうものづくりの視点で楽しめる。ちなみに僕はものを作るのに、“制約”が大好きなんですよ。これしか使っちゃいけないって言われるとすっごい燃えます(笑)。条件がたくさんあることを解決するから面白いんです。

 

角間さん個人として、性風俗の問題にコミットし続けるモチベーションはなんなのでしょう?

まちづくりの時は間違いなくチャラかったです!自分が認めてもらいたいってだけで。

でもなんでしょうね。何年もやって来て、いろんな人と関わったり世の中を見てきてわかったのは、理想だとか想いだけじゃダメなんだなと。今は中小企業のおっさんとかすごい愛しいんですよ。社員5人6人とかの零細企業が生き残るのがいかに大変か。そういうの見ちゃうと「世界を変える」とかってバカバカしくなっちゃって。NPOとかにあんまり中小企業のおっさんが共感しないのはその辺ですよね。キレイな理想論みたいなこと言ってても、それより今この売上をどう上げますか?みたいな、もっと切迫した問題がある。だから今すごいやりたいことや理想があってやってるわけじゃないんですよ(笑)。

でもなんでやってるのかって言うと、“気付いちゃった人の責任”っていうことかも。気付いちゃって、始めちゃったからそこは責任持って最後までやんなきゃなっていう。

 

ぼっちにだけはなるな!

長い時間お話をお聞かせいただきありがとうございました。
この記事を読んでいる方の中には、現在風俗で働きながら不安や悩みを抱えている人もいるかもしれません。
最後にそんな人たちに向けてメッセージをお願いします。

とりあえず連絡ください!何ができるかはわからないですけど。ぼっちが一番やばいから。ぼっち、マジやばい!
別に担当のスカウトやお店のスタッフを信用できていれば、その人たちとうまくリレーションしてればいいけど。そうじゃない子は、とにかく連絡して。ぼっちになるな!

 

あとがき

普段なかなか接する機会のない風俗の世界。時にTVや新聞で報道されることがあっても、何かの事件の背景として報じられたり、貧困や性差別などの視点で扱われているように思います。そこで働く人々は“かわいそう”な存在として描かれ、性風俗自体が危険で問題を内包しているような印象を受けることが多いのではないでしょうか。

1998年風営法が改正された影響で、派遣型・無店舗型性風俗店の営業が届出制になりました。許可制ではなく届出制になることで、誰でも届出さえ出せば、店舗を持たずに女性を派遣するデリヘル店を始めることができるようになり、その数は年々急増。店舗型の風俗店は反対に規制が厳しくなり、新規出店はなくなり、既存の店舗も浄化作戦などの影響で減少の一途をたどっています。私たちが暮らす街から風俗店が姿を消したように見える一方で、インターネットを主戦場としたデリヘルは爆発的に増えました。私たちは“性風俗”という見たくないものに蓋をして、見なくていいものにしてきてしまった。その結果アンダーグラウンドな風俗の世界で何が起きているのか見えなくなっているのではないでしょうか。

そんな“性風俗”の世界で、GAPが一番の問題と捉えているのは“孤立”でした。家族や親族、地域社会やその他のコミュニティから孤立し、何かあったときに頼れる誰かとつながっていなかったり、行政につながる勇気を持てないでいたりする。そんな人々の“孤立”こそ問題であり、貧困や性やその他の悩みがあったとしても孤立さえしていなければきっと大丈夫、と言い切る角間さん。この孤立の問題はなにも風俗の世界だけのことではなく、育児・いじめ・ひきこもりやニート・DV・相対的貧困・失業…などあらゆる分野で共通する問題でもあります。風俗嬢たちは強いスティグマを感じ、「バレたくない」という感情から、引きこもり、人との交流を避け、次第に社会から孤立していきます。一度孤立してしまうと、なかなか社会との接続を取り戻せません。失敗は許されず、やり直しはきかない。横道にそれたら白い目で見られる。そんな多様性や寛容性のない社会を私たちは生きているのではないでしょうか。だからこそ本当は社会を構成する私たちみんなが向き合う必要があるのではないでしょうか。

角間さんは“気づいちゃった人の責任”と言っていました。みんなが気づかないふりをして見過ごしている問題に、仕組みを作る楽しさを持って取り組んでいます。そんな彼らの事業で、一人でも多くの方が孤立せず、新しい一歩を踏み出せることを願っています。

 
前回の記事を読む(1/2)
 


 一般社団法人GrowAsPeople

URL:http://growaspeople.org/
Twitter:https://twitter.com/kakumaro?lang=ja(代表・角間惇一郎)
Facebook:https://www.facebook.com/growaspeople343


 

 

ライター:
タグ: