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「福島県新地町でのボランティア経験」から見つめる”これからのボランティア”

※このインタビューは、2012年3月13日に掲載したものの再掲になります。

 

自転車で世界一周に取り組む旅人、西川昌徳さん。テントで寝泊まりしながら、自分の知らない土地を訪ね、歩みを進めている。旅の間では、4ヶ月間にわたる中国四川大地震ボランティアをはじめ、旅をしながらインドマザーハウス、ネパールの山間部教育支援など各国のボランティア活動にも従事している。「これからは職業=旅人として旅を続けながら、もっと多くの活動に関わっていきたい」との思いから2009年12、2年半に及ぶ旅を休止して、インドから日本に一時帰国していた。そんな中、2011年3月11日、東日本大震災が発生。何が出来るのか?という問いに向き合い、過去に自転車で日本一周をした際にお世話になった福島県の新地町でボランティアを開始。約1年間、新地町でボランティアに従事した中で見えてきた復興への課題とこれからのボランティアの在り方を講演会&インタビューを通して西川さんにお伺いした。

 

講演会での西川さんのお話(チャリティ・ジャパン編集部メモより)

 

震災発生後に新地町へ

福島の新地町。自分にできることがあると思って行った被災地に広がる瓦礫を目にして果たしてここで自分に何ができるのだろうと途方にくれた。被災地に行って初めて、自分の中で震災が現実になった。

 

ボランティアセンターが立ち上がっていない中、避難所の自転車のパンク修理をはじめる。パンク修理をしていると、がれき撤去をしていた家族に一輪車の修理も依頼された。色々なものの修理を共にすることで新地町の住民と打ち解けるきっかけになった。

 

移動喫茶店を開始

そしてボランティア活動として、移動喫茶店を開始する。

 

新地町の方々は朝から晩までずっと同じ場所にいる状況。そんな中で、ほっとする瞬間を提供したかった。しかし、被災された方の話を聞いて、自分にかけられる言葉はない。聞くことしか出来ない。

 

せめて自分が出来ることは何か。自分の好きな珈琲を避難所のみなさんに飲んでもらうことだった。

 

四川でのボランティア経験を活かす為にボランティアセンターのスタッフに。

新地町では、住民と同じぐらいの数のボランティア(延べ人数)がいらっしゃった。ボランティア経験者が多いのではないかと思っていたが、初めて参加されるボランティアの方が多かった。ボランティアを紹介することは、普通に仕事に当てはめると人材派遣会社。しかし、災害ボランティアセンターにはもっと大切な役割があると思った。

 

そう思ったきっかけは、出会った支援のプロの方の言葉を聞いたことだった。「ボランティアに来る人たちがより深い気持ちを持って作業出来るか。それをつなぐことが出来たら、もっと多くのことが出来るかもしれない。」

 

ボランティアと住民の心をつなぐための工夫。それは被災者(依頼主)とボランティアの方を必ず引き合わせることだった。ボランティアセンターの役割はどうしたら気持よく作業できるのかどうすれば強い思いをそこで持って貰えるのかを調整することに尽きると思う。被災者(依頼主)とボランティアの方が作業に入る前にあいさつをする。その瞬間に「被災地の為に出来ることは何か」⇒「●●さんの為に出来ることは何か」に変わる。ボランティアが人と人とのつながりに変換される瞬間。
 

ボランティアセンターでの活動を通して考えた今後のこと

人と人とのつながりが震災を風化させないことにつながるのではないかと思う。被災は簡単に数字で表されるものではない。放射能の問題も新地町にはある。生活している家族の中には自分の子どもに申し訳ないと思っている方もいる。被災地で生活するということは数値では表されないということを理解しながら支援について考えることが必要。

 

新地町で出会う方の多くのスタンスは、「色々なものを失ったけど、それでも頑張るか」ということ。そのようなマインドセットの人達に向き合うことは、支援をしに行っているという感覚ではなく、学びに行っているという感覚に近い。だからこそ、自分が心掛けていることは、その都度出来ることを全力に。子どもと遊ぶことも全力。大人と話をする時も全力。
 

被災地(新地町)の今後とボランティアの在り方

被災地(新地町)は今どう変化しているのか。自衛隊やボランティアのおかげで風景は変化している。瓦礫はなくなり、仮設住宅は出来た。その中で、雇用が問題。放射能の影響で農作物・海産物の仕事が出来ないことが背景にある。

 

全壊家屋の取り壊しがスタート、新築の住居も出来つつある。インフラも整備されつつある。しかし、船はあるのに、漁に出ることが出来ない。もうすぐ1年になるが、震災●年という区切りはすべきではない。それで何かが変わることはないからだ。

 

今は、生活支援のフェーズ。そして、今は顔見知りのボランティアが何度も来てくれると嬉しい。ボランティアに行くことが一番だと思っていない。行った人が偉い訳ではない。大切なのは、どれだけの人が被災地で起こったことを、自分の身近に起こったこととして捉えられるか。

 
 
⇒⇒次ページからインタビューになります

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