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「2年目の支援、これから大事なこと」

雇用の先に立つコミュニティ、ソーシャルインフラの再生が鍵

-声が広がっていく為の前提条件として、雇用が大事な要素になるかなと思っているのですが、そちらはいかがですか?

今おっしゃったことは雇用が地元の方が自立する為に必要なポイントなのではということだと思うのですが、実は逆かもしれないと思い始めています。雇用を何とか確保することで・・・という側面は確かにそうなのであろうと思います。

しかし、こうも考えられるのですね。コミュニティが成り立って安心・安全が確保出来、それによってようやく仕事が出来ると。

コミュニティが出来て、自分たちでやっていこうという声が上がっていくのが先で、その中で働けない人がいる、じゃあ「お店を手伝ってもらおうよ」・・・のようにコミュニティの中で雇用が生まれていく。

実は、今後の方向性になるのではないかなと思います。

というのも、全国から被災地に色々な会社が入っていったのですが、ハローワークで募集しても集まらないんです。そのような事情をよく見てみると、皆さん、生活の不安があったり、将来見通しがつかないという状況の中で仕事に就いていいかどうかが分からない。例えば、会社に行く移動手段がないとか、家族が寝たきりになっていると、それが不安で仕事につけない。かといって周りで看てくれる方がいるかというと、そういう方がいる訳でもない。このような状況で、とりあえず働きたい方どうぞ!とやってもなかなか手が挙げづらい状況があります。

地域の方が安心してそこで生きていく為の環境を整備しないと、機械的に「100人雇用します!」という話をしていってもなかなか手が挙がらないのが現状なのです。

失業給付を受ける方の中にはパチンコに行ったりする方もいる訳ですが、そのような方はほんの一部です。皆さん、本当にまじめに働きたいと思われています。だけども、働く為の社会基盤自体がなくなっているんですね。移動手段がない、ご老人をサポートする方がいない。コミュニティを通じて人力でもいいので支え合う仕組みが出来ていく、だからこそ働けるようになる。こういう順番なのではないかと思います。

お金がない中で場所にも限りがあり、インフラが弱い中で、お互いが助け合っていく場作りをどのように進めるかが焦点になっていくと思います。

(大船渡長洞の仮設住宅団地)

仮設住宅の連絡員、地域コミュニティの連絡員が情報を届けることが必要

-そういった意味でコミュニティ支援で言うと、仮設住宅支援は非常にイメージが湧きます。一方で、みなし仮設の方のコミュニティ支援はどのように行っているのでしょうか

仮設住宅の支援では、これまでは住宅団地毎、更に一つ一つのご家庭に支援に行く必要があった。これでは支援をする側も支援をされる側も色々な情報がありすぎて負担が大きい。その為、管理人(仮設住宅支援員)を設置することで、負担を減らすことが出来るんですね。(支援をする側は管理人に確認するだけで状況を把握出来る、支援を受ける側も個別の団体がたくさん来るわけではなくて、ニーズを上げておけば、支援が受けられる)そのようなモデルを作ったのが大船渡の仮設住宅の状況です。

これが発展しており、大船渡だけでなく、大槌と釜石にも広がりました。

これは大前提ですが、全員に対して物資を送り続けるという仕組みを作ることが狙いではありません。きちっと情報を送る仕掛けが必要です。

(仮設住宅団地支援員の研修の様子)

もう一つはみなし仮設に住んでいる方が2,000人いらっしゃいます。その中で困窮されている方は数%です。他の方は、自分で暮らされていたりして必ずしも支援が必要なかったりします。困窮されている方は確かにいらっしゃる中で、大事なのは2,000人に毛布を送り続けることではなくて、自立しようとした方の意欲をそがないように、そこの状況をケアし続けて何か課題があれば対応が出来るようにすること。

そうした時に仮設住宅と違うのは、仮設住宅の場合には住んでいる方が集中していますから全員回れるのですが、みなし仮設の場合はそうはいかない。その為には少し間接的になるのですが、地域ごとのコミュニティの方々がみなし仮設の方も含めてケアをする体制をいかに作るかがポイントになってきます。その場合、行政から委託する形で個人情報を開示する、開示する中で回覧板でもいいんです、情報を出来れば直接届ける。2,000人の中で優先順位を付けて特にケアが必要な方を手厚くする。そういうことが大事です。一言で言うと、みなし仮設への支援は、地域の自治会が中心になっており、その方々がケアするような体制作りをサポートするということになります。

今、そのような地域の方を連絡員と呼んでいます。みなし仮設に住んでいる方々にきちっと連絡すること、自治会に連絡すること、そのことを通じて結果としてそこに住んでいる方が漏れなくカバーされている。ある意味、見えないセーフティーネットのようなものだと思います。極端に言うと、連絡さえしていて一切支援要請がなければそれでいいんです。

支援をし続けるというのはある意味、上下関係を維持することにつながります。僕はコミュニティに切り替わるタイミングで支援という言葉を外した方がいいと思っています。支援は一つのツールでしかない。むしろ連絡がちゃんととれている、コミュニケーションが取れている状況を作ることが本質です。

ボランティアを語る際には、外からのボランティアなのか、内からのボランティアかを分けて考える必要があると思います。そしてこれから重要なのは、「モノを買って事業者を後押しすること」

-そういった中で、ボランティアが少なくなっているという報道があります。中には、ボランティアに行かなくてはいけないのではと思ってしまうのですが、コミュニティを作っていくという観点の中で逆に変に介入しない方がいいのではという懸念も出てしまうのですが、その点はいかがでしょうか

定義しないといけないのは、地域内のボランティアと地域外のボランティアの2つがあることです。地域内の方はボランティアとも言っていなくて、ただ単に手伝い合っているだけですから。世の中のデータとして出ているのは外からのボランティアのことです。

一旦、外からのボランティアに関してお伝えしたいと思っているのですが、象徴的に言えるのは、今まではサービスも含めて「モノを届ける」のがボランティアであったということ。そしてこれからは「モノを買う」のが仕事になってきます。

というのは、モノを届けるのは支援ですね、現地にモノがなくなったからあげる。これはある意味上から目線で、支援をしてあげて喜んでもらうと。勿論、一部困窮されている方がいらっしゃると思うのですが、丁寧に現地に行かないと分からないので、外からは支援し難い。そこは現地の連絡員の仕組みによって解決を図っていかなければならない。むしろ、外の方に大量にやって頂きたいのはモノを買うことです。具体的には、地域の名産品であったりとか、被災者の方が作ったものだったりとか、サービス・観光に行くことも含めてになります。

なぜかと申しますと、今、瀬戸際になっているのは、地域の経済を担ってきた商店を持っている方、商店街の方、事業をやっている方がこれから復活をしていいかどうか迷っていらっしゃるのですね。僕らは1個買って1,500円だとして、1,500円買ってもたいした利益にならない、意味ないんじゃないかと思うかもしれませんが、実はものすごく意味があります。

事業者の方が何を迷っているかというと、自分たちが商売を復活させて継続的に売れ続けるのだろうかと。この事業に本当に価値があるのだろうかと見極めなければいけない状況なんです。価値がないと分かれば、今、一瞬、売れていようが関係ない訳です。復興支援で買われたとしても、いざその波が終わってしまえば、損になる訳ですよね(生産ラインを増やすなどの投資もする必要がありますし)

彼らは、「今はいい、だけど、5年、10年かけて自分たちがやっている事業が本当に続けられるのだろうか」というのを真剣に悩んでます。借金が必要になる訳ですし。彼らは地域の復興の為にもものすごくやりたい。でも本当にやっていいのかというのを本当に迷っているのです。という時に、被災地外の方で本当においしいね!と言って一個でも買ってくれると後押しになります。

一人が買うだけでも。よく言っているのは復興支援だから止むを得ず購入をするとかはやらなくていいです、と。むしろ、これはおいしいと思うものを判断してください、と。その価値は何十倍・何百倍の意味があるんですね。今、事業者が立ち上がることが地域のコミュニティ再生・雇用にものすごく効きます。勿論、ボランティアは素晴らしいのでどんどん行って頂いていいのですが、それ以上に重要なのはモノを買うことだったりする。是非、そのような動きを促進したいと思っています。

-仮に外からのボランティアが必要とされる場面は、見ている中であったりしますか?

ニーズとしては減少しています。ただ、ボランティアセンターのホームページを見れば、瓦礫撤去などのボランティアもまだまだあります。あとは、助けあいジャパンさんなどがやっているボランティアツアー(観光とセットでボランティアをする)に参加するのもオススメです。一般の人という観点で言うと、とにかくモノを買いましょう、観光ツアーに行きましょうという動きが大事かと思います。

(宮古・魚菜市場)

水産加工業の再生が産業再生のキー。国では支援が出来ない領域。

-コミュニティ再生とともに大事になってくる産業再生ですが、何が重要になってくるでしょうか。

今回、やはり被害が大きかったのは沿岸地域。地域の主たる産業は水産業です。水産業の中で国側の支援は漁港を直すとか漁業者の支援などがだいぶ手厚かった面があります。これは、従来漁協経由などの支援のスキームがあり情報が来やすかったことはあったかと思います。

でも、実は水産業の発展において、一番キーになってくるのは水産加工業なんですね。

勿論、魚を獲るというのは大事な行為なのですが、それだけでは付加価値がそこまで高くないので、漁業者は実はあまり多くないのです。(3県で10,000人くらい)それより水産加工の方が付加価値が大きいので雇用吸収率も高いんですね(漁業者の10倍くらい働いてらっしゃいます。)しかし、水産加工の方々には支援が行き届いていないのが課題です。

個別の企業の支援は国として公平性の原則から難しい(港、市場などは支援しやすい)。例えば漁業の支援でも複数事業者が集まったら支援するとかですね。そのような公的な観点が重視されてしまうので、地元の漁業者は横のつながりが今までなかった状況の中でパッと言われても一緒に共同が出来なかった。立ち上がりが早い、被災度が低い事業者さんに対して、そこが非常に重要なのですが、梃入れする支援があまりなかったんですね。

水産加工の立ち直りのスピードを早める為に必要なことは、ソフト面、加工・製造・販売ですね。ここはお金を付ければいいという訳ではないので、なかなか見えづらく、非常に難しいです。しかし、ここがある種の付加価値の源泉だったりすると思います。簡単に言うと、どうブランドを確立していくか、どう販路を作っていくか(従来販路ではない所を作っていく)新しい商品開発をするなどですね。

そこが求められているのですが、最も国や行政が支援しづらい所だと思います。しかし、そこが肝なんです。ここは国が不得意、出来ない領域であるので民間がやるべきなんですね。民間が知恵を出し合っていいものを作って売っていくことを考えなければならない。

-ソフトの面では、NPO法人ETICが実施されている右腕プロジェクト((※復興をひっぱるリーダーをサポートする人材を派遣するプロジェクト))のようなものが有効なのでしょうか

まさに、そのETICと連携して水産業に特化した右腕を作っていこうと検討中です。水産業ですが、ウェブに販売するという要素も出てきますし、色々他業種から入ってきてもいいと思います。その中で現地に入っていって彼らの良さを理解してモノ作りに入っていく、そのような順番だと思います。これをいかにスピーディーにするかが課題です。

(ETIC右腕説明会)

「君は気仙沼の本吉地区なんだ」「俺は大船渡の赤崎地区なんだ」とか、「あの地区って皆やってないけど誰がやっているんだっけ」そのような議論がなされないと復興は進まない

-その他にこれからの復興で必要なことはありますでしょうか。

もう一つ、これからの復興で大事なことは、何かどこか一つの組織がドーンと支援すれば上手くいくということはないんですね。もっと分散協調的に支援しなければいけないというのがキ-です。各企業さんやNPOさんがこの地域を支援すると決める、それをとことんやり続ける。個人としても、この人を応援する、この小さな企業を応援するとかと決めてもらって人と人の顔が見える支援を続けてもらう。それが全体でみると協調されていると。そのような仕掛けが必要です。一つの所にお金を集めても、考える人は少数な訳ですから、大した知恵は出てきません。小さなつながりが何百・何千とある方が大事です。中央集権的、メディア的に復興を捉えるとうまくいかない。

これは僕らも反省しなければいけないですが、メディアで連日復興特集をやっているのを見て復興が進まないと短絡的に考えるのはやめなくてはいけない。

そう考える自分たちににまずは疑問符をつけなくてはいけないですね。「俺ら何をやっているの?」「隣の人何をやっているの?」という所から考えなくてはいけないと思います。小さい会社一社一社、小さい個人一人一人が直接、向こうの個人とダイレクトに向かい合っている、それはさっき申し上げた商品を買うとか、そういう分散協調になっていく中でボランティアに行くとか、旅行に行くとかやって欲しいですね。

-個別の単位はどれくらいでしょうか

旧市町村ですね。例えば、大船渡市で言うと、元々10の町や村がありました。よく見てみると元々あった旧町村が地区になっています。その単位くらいです。三陸町にある旧町村は漁村になっています。逆に大船渡市の大船渡町と栄町は太平洋セメントがあり、産業集積されていて都市型になります。漁村型の復興と都市の復興と中山間地域の復興は全て違います。

それをまとめて大船渡市なのですが、「大船渡市の支援をしてます!」と言っても、大船渡市のどこなんですか?ということになってしまいます。実際に現地に行って支援をしている方だったら、とてもではないですが言えないです。大船渡市の赤崎地区、大船渡市の末崎の方々の支援をしていますという言葉になります。

そのようにメッシュの解像度を細かくしてやらなくてはいけない。僕らはインターネットというツールがある訳ですよね。ダイレクトな付き合いは出来るようになっています。

メディアを見たら、そういう解像度が細かいことをそぎ落としてしまう訳ですから、僕らはもうちょっとリテラシーを上げて、ソーシャルメディア的な復興を意識しなければいけないですね。

まずは自分自身がどこを支援していて、「君は気仙沼の本吉地区市なんだ」「俺は大船渡の赤崎地区なんだ」とか、「あの地区って皆やってないけど誰がやっているんだっけ」とかそのような議論をしていかないといけないと思います。

皆、「東北復興考えなきゃ」というんですが、いや違うと、東北って言っても色々あるんだから。それはほとんど世界平和と言っている中学2年生と一緒であって、解像度を上げなくてはいけないですね。

-そういった分散をさせる為に、個人であったらツアーであったりが有効なのですね。

直接行って頂いて、この町の人達と付き合っていこうとか、この店の商品がおいしいから付き合っていこうとかを決めることですね。

-もう一つ重要なのは、企業が支援をする際に、どこを支援をするか決める判断材料がないといけないということですよね。

そこは課題としては、個人・中小企業がどこを支援したらいいかというのは情報として得づらいと思います。一つは東北復興新聞(http://www.rise-tohoku.jp/)のように、もう少し細かいメッシュで情報を伝えていくメディアが重要だと思います。それらの情報を通じて、どこの地域がどんな状況なのかというのを理解するのが大事です。

全国紙だけ見ていても大雑把な情報でアクションにつながらないと思います。完全な復興はありえませんから、当然、「この地域は進んでいる」「この地域は遅れている」と細かく語れないとリテラシーがありません。復興が遅れている/進んでいるという議論をしていても仕方がないのです。

インタビューイー
藤沢烈 ( ふじさわれつ )さん
RCF災害支援チーム代表
RCF復興支援チーム 代表理事。
外資系コンサルティング会社勤務後、NPO・社会事業・ベンチャービジネス
設立に特化したコンサルティング会社を経営。
3.11後はRCF復興支援チームを立ち上げ、震災関連情報の分析や、
被災地における事業創造に取り組んでいる。
復興庁政策調査官、文部科学省教育復興支援員も兼務。
ホームページ http://rcf311.com/。ツイッター http://twitter.com/retz/

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