Loading...
2016.03.04.Fri

自死遺族という言葉を聞いたことがあるだろうか?(インタビュー:NPO法人セレニティの代表田口さん)

自死遺族という言葉を聞いたことがあるだろうか?近年、自死される方が依然として多くいらっしゃる中で、残される遺族も増えているのは当然の事実である。しかし、自殺予防対策が声高に叫ばれている中で、自死遺族の存在はあまり話題にならないのではないだろうか。自死遺族に寄り添い、支援を続けるNPO法人セレ二ティの代表田口さんに自死遺族の取り巻く状況をお伺いした。

 

 「自死遺族への差別が知られていないという事実に衝撃を受けました」

 

-改めてどのような活動をされているのかをご説明頂けないでしょうか?
 
私自身は、自死遺族への講演活動を中心とした啓発活動をしています。
 
啓発について取り組もうと考えたのは、2年以上前に、NHKの「日本のこれから」という討論番組に出る機会があったことがきっかけです。その時は活動を開始する前だったのですが、その時に自分自身は教師から自死遺族ということで受けた差別を訴えました。
 
その時、たまたま番組に出ていた市民の方から、(彼女は後でお伺いしたら自殺未遂の経験があったみたいなのですが)、ご連絡を頂いて、「私はあなたの発言に衝撃を受けました、私は自死遺族への差別があることを知らなかった」と伝えられました。そのことにすごい衝撃を受けました。私や他の遺族の方は実はすごく苦しんでいる問題です。一般的に知られていない状況は良くないのではと思い、自分から発信していこうと思ったことがきっかけです。
 

-私もお話をお伺いする前は、自死遺族に対する差別・偏見があるという事実を知らなかった、意識したことはなかったのですが、具体的にどのようなことが発生しているのでしょうか?
 
分かり易いものは珍しいです。遺族自身も被害妄想的になっている所があります。自死ということを言ってはいけないということを家族から言われたりだとか、愛情が足りなかったから自死に至ったんだというような形で。
 
割と宗教者からの差別も多いです。差別的な戒名を付けられたりだとか、キリスト教は仏教よりも厳しくて、自死した方の葬儀は教会では上げられないとか。(それはおそらく自死を防ぐためのものでもあると思うのですが)
 
あと、1番の問題になっているのは、賃貸物件で自死した場合ですね。遺族が法外な損害賠償を吹っかけられたりするケースがあります。具体的にと言われると細かいことがたくさんあるのですが、自死したことで会社が迷惑を被ったから退職金を払わないとか。迷惑をかけたという言い方が非常に多いと思います。

 

-周りもそのような表現をしてしまうことが多いし、過剰に受け取ったり、責任を感じてしまう遺族が感じてしまうということですね
 
逆に遺族自身も差別がある訳です。

 

-自死遺族の方が他の自死遺族の方に対して差別をしてしまうということでしょうか?
 
これは私の考えなのですが、元々、自死遺族に対する差別というものが日本人に元々あったと思います。勿論、いいとは言わないですが、こういうものなんだというイメージがあると思います。
 
それが自分に発生した場合、今度、自分にその偏見が向いてしまうということではないかと考えています。遺族は「まさか」という訳ですよ。自分の家族にそんなことが起こるとは思ってないんですよね。自死される方は、悟られないように亡くなられることが多いんですね。そうすると、今まで他人事だと思っていたことが自分に向けられてしまう。

 

-そういった差別・偏見がある中で、それを受けて遺族の方はどのように消化するのでしょうか?
 
本当にご遺族の数だけケースがあります。あと、亡くされた方の立場によってかなり違ってきます。伴侶を亡くされた方、お子さんを亡くされた方でも違います。一慨にまとめられるものではないです。
 
ただ、借金は別の話かもしれません。自死される方は基本的に色々なことを隠そうとするんですよね。抱え込む方が多いので、自死された後に、そういった現実的な問題が発生することが多いです。そして、ある場合には、弱味に付け込まれる場合もあります。基本的には、自死遺族もいけないことをしたんだという印象を持っていますので、法外な損害賠償や要求に対しても呑み込んでしまうケースがあります。
 
あとは、見捨てられた感じというのもあります。
 
生きられる可能性があったのに、なぜという疑問が常につきまといます。
 
分からない原因を探してしまい、自分にその原因が返ってきてしまう。ある遺族の方は、客観的にみるとどう考えてもそれが原因ではないという細かいことに対して、それを言ったのが悪かったんじゃないかという思い込みに駆られて苦しまれているというケースがあります。
 
もう1個大きいのが、薬の問題が多いです。医療につながることによって、もともと精神的に弱い方は精神科にかかるケースがあるじゃないですか。そのことによって、色々な薬を投与されて、そこで突発的に飛び込んでしまうケースもあります。医療につながることによって、逆に悪化するケースがあります。

 

 

 

「自死遺族の癒しの場としての“分かち合いの会”」

 

-個別にそれぞれ事情が違うと思うのですが、まずはそのような問題があるということを伝える部分が大事だと思います。その中で、自死遺族の方と「分かち合いの会」もされていらっしゃると思います。そういった手法で遺族の方自身の偏見を解消していくことをお手伝いされていらっしゃるのでしょうか?
 
アルコール依存症などの療養方法として使用されるものとして、その仲間同士がつながる自助グループを形成して「分かち合い」をすることで治療していくものがあります。その自助グループでは、言いっ放し、聞きっ放しで、会話というよりは、自分が話をしたいことを話するという場です。
 
同様の手法で、自死遺族のグループでもやってみたのですが、非常に癒されました。体験をしていない方と話をすると、否定されたりしてどんどん話をしなくなるのですが、同じ体験をされた方と話をすると、「それは私もある」とか、「それはひどいね」とか、今まで自分だけだと思っていた思いこみが融けて行くんですね。そういう経験があるから、分かち合いの会をしようと思いました

 

-一般的な自助グループと自死遺族の方の自助グループの分かち合いで相違点はありますか?
 
先ほども話をしましたが、立場が違うと感じ方が違いますし、なかなか共有感が持てない。悲しみ比べとか言うんですが、「●●が辛かったとか」とか自分の体験を話をしても、更に傷ついてしまうケースがあります。だから私は遺族の分かち合いの会ですごい救われたのですが、やっていて更に傷つく方がいるのは事実です。でも、やることに意義があると考えていますので、1回/月で開催するようにしています。

 

-更に傷つく方がいる中で、気を付けていることとかありますでしょうか?
 
なるべく、Iメッセージで言うようにしています。相手を絶対に否定しないようにはしています。ただ、そのようなルールを掲げていても、辛い時には機能しないこともありますが。。

 

-自分の体験を話したりすることで、自分の偏見が解消されるケースがあるということですね。
 
そうですね、ただ、そこに来れている方は余裕がある方なんですよね。今の問題はそこに来れない方ですね。一番大変なのはそこに来れない方なんです。

 

-そこは、機会を知らないことが多いのですか?、それとも余裕がないのでしょうか?
 
あることを知っていたとしても、行かないと思います。
 
自分の住んでいる町に機会があったとしても、あえて隣町に行きます。地元の方に会ってしまうから行かないということがあります。
 
私もそうなのですが、山口県の地縁や血縁が濃い場所で暮らしていたので、「●●町の●●さん」というと分かってしまうんですよ。私の母も似たような機会があるという話を聞いていたみたいなのですが、行かなかったですね。

 

-それでも分かち合いの会には参加した方がきっといい効果があるんですよね?
 
そうですね。
 
やはり、普通の病気や事故などでお亡くなりになられた遺族の方は思い出を話するじゃないですか。こうだったよね~とか、それがブリーフワークになっている訳です。自死の方は家族内で一切そのことを話しないんです。思い出すのが辛いから家族の中で話をしなくて、そうするとどんどん話をしてはいけないというように過去のものにならないですね。
 
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
 

「自死遺族への社会的なサポートがなさすぎることは知って欲しい」

 

-来れない方が一番大変な可能性があるという話の中で、そういったケースをなくしていく為の自死遺族の方に対する偏見や差別が社会的にあるということを伝える啓発活動だと思うのですが、いつか自分がその立場になりうることを知っていることが事前の予防策なのではないかと思います。啓発活動をされていて何か気付きはありますか?
 
最初は、自分の周りにはいないということを言われることで、それはそうだろうなぁと思っていました。しかし、啓発活動を進める中で、意外に多いなというのが最近の感想です。この前も山梨県の自営業者の方向けにワークショップを実施したのですが、半数以上がご家族でないとしても友人が自死でなくされている方がいらっしゃったんです。自分が思っている以上に周りが自死で亡くされてしまう方が多いということが意外でした。
 
あと、今、未遂をしようとしている方が、私の話を聞いて「遺族がこんなにずっと苦しむとは思わなかった、自殺するのを辞めようと思った」という感想をくれたことがあります。

 

-自死遺族の方に対して、社会的にサポートが足りないと実感するケースがあるのではないでしょうか?もしあれば、教えて頂けないでしょうか?
 
サポートがなさすぎると思います。
 
自殺に関しては、語られないことになっているということを非常に感じます。
 
やっぱり忌み嫌われることなんだと。自死遺族をサポートする必要性を感じられていないですし、極端な言い方をすれば、勝手に自分で立ちあがれよと言われているように感じます。実際、遺族はそう思われている方が多いです。
 
最近はやっと防止に関しては、社会的な問題として捉えられて、防止に関しては社会的サポートが盛り上がっていると思いますが、遺族の方に関しては、全くないです。
 
別に何かを上乗せして欲しい訳ではないんですよ。マイナスな所が多すぎるから、例えば、自死したことで負の遺産を押しつけられること。ただ、病気や事故と同様に対応して欲しいだけなんですよ。

 

-自死だから金銭的な保障を受けられないとかがあるということですか?
 
そうです。あとは、法外な損害賠償を請求されたり、サポートを受けられないケースとかですね。自死も他の死と一緒に扱って欲しいと思います。とにかく特別な死だと思って欲しくないと思います。

 

-最後に、この問題を知った方にどのように関わってもらいたいとお思いですか?
 
周りにそういう方がいらっしゃったら、励まそうと無理にせず何か助けて欲しいことがあれば言ってね!というように寄り添って頂ければ嬉しいです。勿論、活動資金のサポートもあれば嬉しいですね。

 

 

インタビューイー:田口まゆ ( たぐちまゆ )さん
NPO法人Serenity(セレニティ)代表
心理学、人間関係学を学びながら、2000年ころから依存症問題の自助グループに関わる。
自死遺族当事者として社会からの差別偏見を受けた経験から2011年4月に自死遺族に対する差別偏見をなくすためにNPO法人Serenity(セレニティ)を設立。
代表兼自死遺族当事者として各地で講演活動や月に一回都内で「死の差別偏見について語る」という分かち合いの会を開催している。

【メディア】
NHK「日本の、これから」「おはよう日本」、週間女性、佛教タイムス、「自殺を防ぐためのいくつかの手がかり~未遂者の声と対策の現場から」渋井哲也著河出書房新社

【講演実績】
宇都宮大学、駒澤大学リビングライブラリー、獨協大学ヒューマンライブラリー、東海大学、八王子合同法律事務所、反貧困世直し集会、door~心のドアを開けよう、その他

※この記事は、チャリティジャパンサイトにて、2012年10月27日 (記事は取材時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)にて掲載した内容を再掲しております。

ライター: