ようこそ、ソーシャルスタンドへ

「対等って何だろう?」聴者と聴覚障害者が対等な社会を創造する、シュアール大木洵人さんインタビュー

聴覚障害者の置かれている状況

110番や119番通報がしにくいといった以外に、聴覚障害の方はどのような不利益を被っているのでしょうか?

聴覚障害も身体障害というのはそうなのですが、より情報障害だと思っています。

例えば視覚障害だったり車いすだったりすることも身体障害はあるのですが、日本語で情報を得られる点に関しては健康な人と同じなんですよね。

聴覚障害の場合は使う言語が違います。日本語とは文法や単語が全く違う手話という言語が思考のベースになっている方なので、日本語が理解できない。外国人と同じです。

聴覚障害は見てもわからないことも不利に働いています。

聴覚障害の方は36万人いて、32万人の視覚障害の方より多いんです。という話をすると結構驚く方いらっしゃいます。聴覚障害者を「見たことがない」と。確かにその通りで、難聴者かどうか、話をしないと分からない。補聴器をつけていても髪が長かったら分からないし。しかも全員が補聴器をつけているわけではなく、うちのスタッフのろう者3人のうち、2人は補聴器をつけていませんからね。

見た目でわからないので、困っていても「助けましょうか?」が言ってもらえないんですよね。

たぶん、知ってれば聞こえない人を助けたいと思う人はいっぱいいると思うんですよ。
東京は冷たいとかいいますが(笑) 困っていたら助けるじゃないですか。
視覚障害や妊婦の方は困っていたら、困っていることないか?って聞けますよね。
見た目でわからなかったり、コミュニケーション出来なかったり、何を求めているかが分からない。

これが結構聴こえない人を社会から断絶させちゃうんですよね。

声がかからないので、社会的な適応感がなくなる、所属している感覚がなくなっちゃう。
実は身体障害者のなかで聴覚障害の離職率が一番高いんですよね。仕事ができないわけでもないんですが、疎外感があるからやめちゃおうかな、となってしまう。

聴覚障害者が聴者と同じように人生において多様な選択肢を与えられた対等な社会とうたっていますが、逆にいうと現状そうなっていないということだと思います。具体的にどういったことがあるのでしょうか?

例えばですが、障害者雇用のシチュエーションがあります。

障害者雇用であるのにも関わらず、要件としてTOEIC700点というケースがある。TOEICの点数配分のうち半分の、495点がリスニングです。なので700点は聴覚障害の方にとっては実質足切り。選択式の問題なので、リスニング部分をあてずっぽうで回答してだいたい600点とかになるので、700点っていうのはなんか少し悪意を感じるんですけど。

実際、障害者雇用のイベントで話をする際に、聴覚障害お断りというケースがあります。
雇う方も聴覚障害者の方が扱いづらいっていう経験をしちゃっているんですよ。やはり言葉が通じないので。ただやめる原因を見るに多くがコミュニケーションミスなので、うちの会社が間に入ってコミュニケーションをサポートすれば、全然問題ない場合が多い。

ツールがあれば、同じ価値が出せるのに、聴覚障害があるという理由で、不利になってしまうもしくはそもそも道が閉ざされている、それって対等ではないなと。

我々は眼鏡になりたい

そういう意味で我々は眼鏡みたいなものになりたいんですよ。私もレーシック手術しているんですが、そういうのしなければ僕らだって視覚障害者じゃないですか。

レーシック手術前は視力が0.02だったので、パソコンだってこう見なきゃいけないじゃないですか(顔めっちゃ近づけながら)(笑)

完全視覚障害ですよね。で、多分生活上社会上不利だと思うんですけど、レーシック、めがね、コンタクトレンズという選択肢があって、生活上不便はない。あれば、朝起きて眼鏡探すくらいの苦労で済むわけですよ。

聴覚障害も補聴器や人工内耳ありますけど、完全に聞こえるようにはならないし、まだ障害を感じる。じゃぁうちは、手話通訳というものを遠隔でいつでも使えるものにすることによってそのギャップを埋めたいと。

「そういえば、あの人聴こえないよね。でもあの(シュアールの)ツール使ってるから全然気にならないよね」っていうくらいの感覚で聴覚障害の方に接する。デバイスを起動する5秒くらいの時間を待つ配慮をするくらいで問題ない、くらいになって対等かなと思っています。

ちなみに対等って言葉を使っていますが、平等はないと思っています。
だって、超イケメンでうまれるたら全然違う人生をおくっていると思うんです(笑)
平等は求めるものではありません。もうそれは単に前提が違うものなので。
でも対等というのは多分あって、対等な社会を作ることは出来ると思います。

聴覚障害のかたには能力が高い方もたくさんいます。なのにチャンスを与えられていないケースがある。優秀だけど学歴がないというのに似てるかもしれません、起業家でもそういう方がいます。めちゃくちゃ優秀なんだけれど、学歴という理由だけで起業しか選択肢がなかったひとなんですよ。学歴がないということで社会において不利になる。

別の問題ですが、少し似ているところがあると思っていて、「あなた聴覚障害者ですよね」それで終わってしまう。それを、「あなた聴覚障害者ですよね」「手話しか使わないんですね」「でもこのデバイス使えば参加できるんだね」「じゃぁ普通に働こうよ」という風にしたい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です