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2017.08.31.Thu

ドキュメンタリー映画『もうろうをいきる』の作り方。— 僕らは手を引いてもらっていた。

盲ろう者と、その周りの人々の日常を追ったドキュメンタリー映画『もうろうをいきる』が8月26日(土)よりポレポレ東中野にて公開が開始された。

さかのぼること2ヶ月前。完成したばかりの同映画を拝見して、監督の西原孝至さんとプロデューサーの小町谷健彦さんに、『もうろうをいきる』がどのようにして作られたか、伺うことができた。 

映画「もうろうをいきる」

6月某日、少しづつ夏が近づく東京・高田馬場。社会福祉法人全国盲ろう者協会にてお二人にお会いした。

 

日常の所作、
小さな感情の動きを撮りたい。

―映画、拝見させていただきました。盲ろう者のドキュメンタリー映画だと聞いて、少し身構えていたのですが、気負わずに見ることができました。

 

西原映画を見た方から「盲ろう者の人たちって、意外と普通の生活をしているんですね」という感想を頂くんです。監督としての僕の個性なのかもしれませんが、今回の作品に限らず、淡々とした日常の所作や、小さな感情の動きを撮りたいと思っていて。もしかしたら、生活の中で困難そうにしている場面ばかりを狙うこともできたのかもしれません。でも、彼らが洗濯をしたり、ご飯を作ったりする、日常風景の方に興味があった。映画の中で、盲ろう者の方が洗濯物を干すシーンがあるんですが、10年、20年その所作を繰り返しているから、見えないけど感覚で干していて。それを見た時の僕の驚きが反映されて、そこはちょっと長いシーンになりました。

映画「もうろうをいきる」より

 

―今回、西原監督に白羽の矢が立ったのも、そのような視点が評価されたからなのでしょうか?

 

小町谷元々、西原さんが撮ったシールズの映画を見て、繊細に人の感情を捉える人だと思って今回の作品の監督をお願いしたんです。シールズの映画は、大きなことが起きてるんだけど、彼らの青春群像になっている。画面の外側から少しずつ、デモなど大きなことが滲み出てくる、それが素敵だなあと思ったんです。

 

映画『わたしの自由について~SEALDs 2015~』監督・撮影・編集・製作:西原孝至

 

撮りながら伝えるべきものを探していく。

―なにか秘訣とか、作品作りで意識していることはありますか?

 

西原:今まで僕は、シールズのドキュメンタリー1本、フィクション2本を撮っていて、これが4本目なんです。監督それぞれだと思うけど、僕はドキュメンタリーを撮る時に予めテーマを決めたりせずに、カメラを向けさせてもらう人とのコミュニケーションを通して、撮りながら伝えるべきものを探していくんです。途中から盲ろう者だけじゃなくて、彼らを取り巻く環境そのものの映画にしようと思った。通訳・介助者や、撮影する我々とのコミュニケーションも含めて映画にした方がいいね、と。盲ろう者の方に「撮らせてください」と言う時も、我々は手話ができないから、通訳・介助者の方を通してお願いするんです。だから、それら全てを含めた人間関係の映画になりました。

 

―深い付き合いをされているんだということが、作品を通して伝わってきました。

 

小町谷色んなお宅にお邪魔したけど、みんなたくさんご飯を出してくれて、すごく歓迎してくれましたね。普段、限られたコミュニケーションをしているからなのかもしれませんが、撮影が来るということをお祭りのように楽しんでくれて、すごくオープンに接してくれました。

関係性も含めて、作品にすることができた。

プロデューサーの小町谷さん

―撮影にも良い影響があったのではないでしょうか?

 

西原撮らせてもらう人たちと「一緒になって作品をつくる」感覚が、今までの作品よりも強かったかもしれません。一年を通して、全国の盲ろう者の方たちに会いに行く。すると、「何が撮りたいの?」って向こうから聞いてくれたりするんです。撮りたいものを伝えると、すごく積極的に協力してくれたりもして。実は、撮り逃した動きをもう一度やってもらっているところがあるんです。年賀状を取りに行くシーンなんですけど、その動きがすごく良かった。だから「今の、もう一度お願いします」と言って撮らせてもらって。ヤラセと言う人もいるかもしれないけど、それをやってくれたという関係性も含めて、作品にすることができたと思っています。

 

―盲ろう者を取り巻く環境そのものが、まさに作品になったということですね。

 

小町谷障害者、通訳・介助者の方に僕らが手を引いて案内してもらっていた、という感覚があります。僕らは、映画を見る一般のお客さんと近い感覚なのかもしれません。盲ろう者の世界を、外からの目線で伝えたかったんです。

 

まず、知ってほしい。

―公開を迎えるにあたって、メッセージをお願いします。

 

西原この映画が公開されて、こういう題材の映画がもっと撮られるべきだと思ってもらえるんじゃないかと期待しているんです。小町谷さんという若いプロデューサーが選ばれたのも、今後のことを考えてなんだろうと思っていて。まず、映画を通して盲ろう者のことをまず知ってほしいという思いがあります。そして、それが支援に繋がればいいなあと。日本の福祉の中で盲ろう者が忘れられているという感覚があったので、その一助になればいいなと思っているんです。自主上映も含めて、色々なところで上映していきたいですね。

―ありがとうございました。

西原小町谷ありがとうございました。

※映画『もうろうをいきる』は、8月26日(土)よりポレポレ東中野で上映中。9月16日からは渋谷アップリンクでの公開も決定しています。公式サイトはこちら

 

インタビュー:西泰宏、船川諒
文:大池容子、西泰宏  撮影:船川諒

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