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2016.12.20.Tue

地球への愛をしめす特別な金曜日へ。パタゴニアが仕掛けたブラックフライデー変換術

アウトドア・アパレル企業のパタゴニアは、2016年11月25日(金)に「100%フォー・ザ・プラネット」というキャンペーンを開催した。このキャンペーンは世界中のパタゴニアの直営店およびオンラインショップで購入した金額の100%を、草の根環境保護団体に寄付するものであった。

 

ブラックフライデーを社会貢献の機会にする。

2016年11月25日(金)アメリカ。その日はブラックフライデーと呼ばれる消費者が一年で最も買い物をする日でした。今年は、日本でもテレビなどで紹介されたり、イオンが初めて開催したりしました。

 

そもそも「ブラックフライデー」とは11月第4木曜日の「サンクス・ギビングデー」(感謝祭)」の翌日金曜日でクリスマスに向けたセールのスタートに当たる日です。そこで、各企業はこぞって大規模な値引きセールをし、より多くの人に購買してもらいます。

そんななかパタゴニアは、値引きセールはせず、「必要なものをご購入いただいたお客様が地球への愛情を示すお手伝いをする日」と捉えて、その日の売り上げを100%寄付するキャンペーン「100%フォー・ザ・プラネット」を実施しました。値引き合戦に対して、社会貢献を売りにしたのです。

原型は30年以上続ける「1%フォー・ザ・プラネット」

今回の「100%フォー・ザ・プラネット」キャンペーンには原型となる取り組みがあります。1985年以来続けられている、「1%フォーザ・プラネット」です。これまでに総額7,400万ドル(約82億円)の寄付をしてきたそうで、世界の自然環境の保護・回復のために、売上の”1%”を、国内外のそれぞれの地域で活動する草の根環境保護団体へ寄付する取り組みです。

つまり「100%フォーザプラネット」は、「1%フォーザプラネット」の特別バージョンで、普段から実施している社会貢献活動を、もっとも消費が動くブラックフライデーで寄付額を最大化したという企画だったのです。

なぜそこまでするのか、できるのか。

しかし、一年で一番売れるときに儲けにしないというのは、一般企業からするとある種、異常な経営判断とも捉えられかねません。しかし、パタゴニアの企業哲学を見れば、それを実行できる説明に足ります。

パタゴニアは、「最高の製品を作り、環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑える。そして、ビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する」というミッションのもと、「外野から”環境が危ない”、”環境を破壊する経済活動は間違っている”」と叫ぶのではなく、「既存のメカニズムの中で、一定の結果を出すことが、一番説得力がある方法だ」と考えて行動しています。

その一つの事例といえるのが、1996年に行われたオーガニックコットンへの転換です。

94年当時、コットン(綿花)は地球上の耕地の1~2%で栽培されていたのですが、世界の殺虫剤の10%、農薬の20%以上を使っており、環境へ悪影響が強く懸念されていました。その状況を変革するために、パタゴニアは1996年にオーガニックコットンへの転換を図ったのです。

しかも、その方法を独占せず、同業他社に積極的に開示しました。結果として、米国の大手スポーツウェア・ブランドが、彼らのコットン製品の1%相当(パタゴニアのコットン製品の全売上高と同等だった)をオーガニックコットンに転換するという動きにまで波及しました。

今回の「100%フォー・ザ・プラネット」でも、この企業哲学と行動が現れています。消費や欲望を刺激する「ブラックフライデー」という仕組みを否定するのではなく、そのメカニズムを受け止めたうえで、パタゴニアとして行動する。彼らのミッションである「ビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する」がよくみえます。

結果は全世界合計で約11億円の寄付に

パタゴニアによると、多くのお客さんがこのキャンペーンに参加し、全世界合計で1,000万ドル(約11億円)の売り上げを達成したそうです。これは、当初、予想していた売り上げの200万ドル(約2億2000万円)の5倍を超える金額で、キャンペーンが成功したことを示唆しています。

また、お客さんの中には、「地球のための寄付金集め」と呼んでいた方もいたそうで、このキャンペーンを通じてパタゴニアの活動、環境問題を多くの方に認知してもらう結果を生んだと言えます。

既存の仕組みを利用して社会をよくする。

欲望を刺激されして、とにかくたくさんものを購入する「ブラックフライデー」をこのまま加速させるのが、選択肢なのでしょうか。

日本でもハロウインのごとく輸入がはじまっている今、もう他人事ではありません。だからこそ、パタゴニアのように、消費への欲望を梃子にして、社会をより良くするための装置に置き換えるチャンスと捉えるべきかかもしれません。それはオーガニックコットンへの転換のときのように、他社も「ビジネスを通じて社会を良くしていく」というパタゴニアの姿勢や取り組みを真似ることからはじまります。次第にブラックフライデーの意味やイメージも変わっていく。そんな未来を僕は期待しています。

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