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発達障害者と向きあうカギ ー否定する前に聞き入れて欲しいー

「発達障害」という言葉が普及する一方で、気を抜いたらトラブルになるなどと障害者と関わることを警戒する人も少なくありません。実際、企業が発達障害者をふるいに落とすための裏工作、障害園児の受け入れ拒否を背景とする待機児童問題などが代表例かもしれません。また、障害を持つ本人は成長するにつれ、そうしたあらゆる枠組みから弾かれていく社会システムに堪えきれずに傷害事件を起こしてしまう事態も少なくありません。

 

この記事を書いている筆者も発達障害者です。自閉症スペクトラムをはじめとした複数の発達障害を抱えています。今回は当事者の立場から、一般の人がどのように発達障害者と向き合えばいいのかを探っていきます。

発達障害者がよく起こすトラブル。

 まず実際によく起きるトラブルを考えてみましょう。私自身、実際に発達障害を持つ方々と付き合ってみると、思春期や青年期にありがちなやり場のない葛藤や苛立ちを経験している人が多い印象です。これは若者にかかわらず、中高年になっても葛藤が持続する場合があり、はなはだしく強烈なものです。私も寄る辺なき苛烈な葛藤を、幼稚園に入ってから未だに引きずっています。その葛藤の要因はひとつと限りませんが、主なものに「解釈の違い」があります。

 例えば小学生の時。クラス行事で机とイスを移動する必要があり、先生が黒板に移動する席の配置についての図を描いて説明してくれました。しかし、私は図の通りにやらないといけないという状況に不安を覚え、ストレスが高まり、全く図が理解できませんでした。そこで、とりあえず周りがやっていることを真似することにしたところ、クラスメイトが机の配置が違うと指摘して来るんです。仕方なく彼の説明に従って机を移動するも、何度も違うと指摘されます。そこで先生が描いた黒板の図を一緒に確認しました。ところが相手は頑として私の過ちを注意してくるのみ。私の混乱は増大し、口論は白熱するばかり、延々と続いてしまいました。
 
 実際のところ、何が正解なのかは分かりません。ただ、こうしたちょっとした解釈の違いが発端に分かりあえず、口論になるというトラブルは枚挙にいとまがありません。そのたび自分がいかに周りの人が持つ共通認識を持たず、かけ離れた世界にいるのかと絶望感さえ覚えるものです。

発達障害者の独自の世界感。

 発達障害者は独自の感性と世界観を持っていることが多く、成長につれて“社会通念”という多くの人が持つべき世界観が生理的に受容できないことに気づいていきます。それはまるで自分が異質の文化圏に飲み込まれる危機的状況と似ていて、自分はいくら周りに合わせようとも周りは自分を受け止めてくれない。
 
このフラストレーションを周りの人たちは決して知ろうとしない。世界観の相違を共有できる機会も不十分です。この現状が続き、その限界点を超えた者が「だれでもいいから殺してやりたい」という衝動にかられ、なんらかの暴力行為で自己を主張する。こんな流れも想像に難くないかと思います。

「知ってみよう」の気持ちで変わる。

 ではこの「解釈の違い」によるトラブルが起きぬように、発達障害者とうまく向き合うにはどうしたら良いか。

私は、「まず当事者の考えに耳を傾けること。」やみくもに否定する前に、だと思います。

 前述の机の移動の件も、周りの生徒からすると「人の話をきけない奴が、屁理屈を言って喧嘩売ってるに違いない」と映っていたかもしれません。でも、もし注意してきた生徒が「知ってみよう」という姿勢を持ち得たらどうでしょう。当事者の考えに正否の判断を差しはさまなかったらどうでしょうか。きっとお互いが楽になるはずです。・

 はじめから批判してはいけません。

 初めから否定すると自分なりに物事を理解しようとする当事者の思考を破壊することにもなりかねず、かえって混乱させてしまいます。まずは意見のすり合わせを行って、簡潔に説明するのがポイントです。

共有と固有の世界が交わる世界へ。

 障害を持たない一般の人は、他者と折り合う「共有」の世界で生きているように私は見えます。一方、発達障害者の中でも特に自閉傾向の人は「固有」の世界を生きているような気がします。トラブルというのは、この共有と固有が相反する文化摩擦の状況でもあります。その固有の世界で一人もがいている発達障害者は、つねに社会通念を強要される無言の暴力と隣り合って生きているといっても過言ではありません。実際、私にとって、人と付き合うことは極端な話、存在を侵される危険に遭うのと同じでもあるのです。
 
 ぜひこのことを多くの方に知ってほしいです。そのために発達障害者と一般人が向き合うための対話と表現の場が生まれてほしい、そう私は切望しています。

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