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福島県の農産物における風評被害と課題

7 年前、 2011 年 3 月 11 日の東日本大震災の影響で、福島第一原子力発電所にて放射性物質の放出を伴う事故が発生した。原発事故以降、福島県各地では放射能測定値が一目で分かる数値計を設置している。現在も、徐々に解除されてきてはいるものの、原子力事故で避難を余儀なくされている地域の人たちがいる。

原発事故により、「地元に住めなくなった」人たちが多く発生したことに加え、農業・漁業など、「福島県産品」をなりわいとする方々の生活にも、大きく影響した。震災から7年が経った今でも、震災直後に出荷が制限された影響によりスーパーに並ばなくなったり、風評被害 (検査により安全性が確認されていても、放射性物質による健康被害などを頑なに信じ、県産品の購入を回避する人が発生する現象)が一部に残っていることで取り扱いをしない事業者がいることなどから、震災後下落した価格が回復していないなど、県内の生産者にとって厳しい状況が続いている。今回は、そうした状況に詳しい方にお話を伺った。

その方の話では、福島県の農産物の価格は震災前と比べると、他県産との価格差が開いたままの傾向にあるという。しかし、今現在は上記のような”風評被害”はごく一部になっている。意外と、放射能による被害を信じている人は少ない。質への信頼感があり、価格がリーズナブルな福島産を購買する層は多数いる。

ただ、更に発展していくためには、課題はまだある。

今後福島県産品が震災の影響を乗り越え、発展していくためには、ブランディングが必要だ。お米でいえば、福島では『こしひかり』『ひとめぼれ』や『天のつぶ』などが流通している。品質は良く、プロにはおいしいと評価されているのだが、消費者の認知度・ブランドで他県には劣ってしまう。福島県は全国でも有数の”あらゆる農林水産物が取れる県”だ。でも、”福島県にしかない”農産物や、名前を聞いて福島県だとわかるような、全国的に有名な農産物ブランドは少ない。そのような中、北海道の『ゆめぴりか』 (無名ではあったが戦略的にブランドを構築し、知名度が上げた ) を例に挙げて、福島にもそうしたブランドのある農産物を作っていく必要があると関係者の方は念を押した。

全国的な傾向ではあるが、福島県内の農家は、高齢化により若い担い手が少なくなりつつある。今後、福島がブランド力を向上させるには、若い農家の存在こそが鍵になるとのことだった。震災の影響は残る中、消費者が”福島県産がいい”という声を上げ、福島県産がもっと店頭に並ぶためには、従来からの”おいしい”農産物に加えて、”福島にしかない”ような質や特徴を備えた農産物を作っていく必要がある。少なくなりつつあるものの、若い担い手の方々が新しいことにポジティブなので、チャレンジし始めていると見ている。加えて、福島県では、主に若手の就農支援を精力的に行っているので、それが結果に繋がればと思う。

福島県在住の筆者は、日常的に福島県産の野菜や果物等を口にしている。それが浸透しすぎているせいか、福島県産でブランドの農産物や畜産物といったら、あまりピンと来ないのが現状だ。農業に携わる身ではないが、ブランド向上によって福島県産の物を今よりも多くの人たちに食べて欲しい。

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