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狭山茶農家『的場園』訪問レポート:「相手に寄り添い求めているものを作る」

3月の終盤、雪が降りしきり冷え込む中、埼玉県入間市の狭山茶農家『的場園』にお邪魔してまいりました。

一階が店舗で、その上の二階には立派な機械がズラリ。的場園ほど機械が揃っている農家さんはないそうで、様々な新しいお茶を作る武器として非常にこだわりを持っておられました。頂いた狭山茶はとても美味しく、じんわりと温まります。

的場さんは、お茶に対する固定観念を取っ払い新しい可能性を模索し、人々にお茶の良さをより知ってもらいたいという想いのもと、精力的に活動されている農家さんです。

農業経営も難しくなってきている時代のさなか、的場さんはどのようなビジョンで、どのような方法で、お茶と向き合っているのでしょうか。

今の若い人はペットボトルでお茶を買うことが多いし、洋食化が進んでいるから高齢者の人もお茶よりコーヒーを飲みがちだったりするんですよね。」と的場さん。

このようなお茶離れには、現代人のコミュニケーション不足も密接に関わっているとのこと。しかし現状を裏返せば、お茶はコミュニケーションにおける最適なツールになり得る、ということでした。

ペットボトルでお茶を飲むことはコストパフォーマンスが悪いですが、何しろ若い人は時間もないし、大人数で茶の間を囲む習慣もないとわざわざお茶を注ぐ気にもならないかもしれません…。都会で生活していると尚更、誰かのお家に招かれてゆっくりお茶をして時間を過ごす、なんて余裕も中々なかったりします。しかしそういう時間を『お茶』というツールを用いて作り出すことによって、忙しい人の中にも心のゆとりを生み出すことができるのかも…と想像しました。

お茶って実はお茶そのものがどうこうというよりかは、淹れてくれる人が味の重要な要素だったりするんです。淹れてあげる、淹れてもらうというおもてなしの気持ちですね。」そのように、的場さんは仰います。確かに、寒い外から帰宅して家族に温かいお茶を出してもらったりすると、嬉しいですよね。日常の中では些細で当たり前の行為になっているかもしれないけれど、一人になれば当たり前ではないことにすぐ気づきます。お茶がただ飲み物としてだけ存在するのではなく、人との恩や繋がりを示すものであることを知り、お茶の奥深さを感じました。

その他にも、お茶というものは実は良いことづくし。健康飲料として抜群の効果を発揮しダイエットアプローチにも優れているそうです。また、文化的な背景を知ること自体が面白く、歴史の中で様々なものに関わりがあるのがお茶。『日本文化の集大成』だと的場さんは仰います。最近では、飲む食べる以外にもお茶の抗菌効果も注目されていたり、オフィスではリフレッシュタイムでのお茶の取り入れを行っている所もあるのだとか。

本当に普段何気なく生活のそばにあるお茶は、色んな側面から切り取って見ることができ、色んな可能性を持っている、ということを知り驚きました。

的場さんが実際に開発した商品の一つである『食べる茶葉』があります。この『食べる茶葉』というのは的場園にしかないそうです。「お茶という伝統を守り繋いでいくことが、若い世代のすべきことですが、大事なのはただ守っているだけではなく、新しい可能性を実現していくことです。」と的場さん。

以前どこかで「変わらないためには変わらなければならない。」みたいな言葉を聞いたことがありますが、それと似ている気がします。簡単なことではないけれど、大事なことですよね。そのために、常に「本質を見る」ということをベースにお茶と向き合っている的場さん。新しい可能性を模索していく気持ちの根底にあるのは、ビジネスを重視するためでもなく、ブランディングを第一にすることでもなく、「相手に寄り添い求めているものを作る」というおもてなしの心からでした。それがお茶の本質なのだそうです。お茶がこれだけの歴史を持っているということはそれだけの質の良さがあり、多くの人に知ってもらいたい。

「来てくれたら良さを存分に紹介する」というやり方もありますが、的場さんはそうではなく、本当に良さを知ってもらうためには、相手に寄り添い中身を知ってもらわなければならない。そのために、自らが外へ出ていき良さを伝えていくのだそうです。「お茶で自己表現をする」と仰っていましたが、まさに人々にお茶を注ぎに行くようにお茶を広める的場さんです。

実際にご自身で独自の開発等をする中で、厳しい日本茶の現状を少しでも盛り上げる事が出来るんじゃないか、という手ごたえを感じているそうです。お茶の可能性も、的場さん自身の取り組みの可能性もともに切り開いているところが、本当に素晴らしいと思いました。

農家さんがこんなに情熱的に向上心を持ってアクティブに活動されているのを知らなかったので、お茶や農家に対する見方が良い意味で激変しました。運営している側も、お客さんの方も、農家の固定観念を打ち破っていきたいものだなあ、と思ったり。それも、農家だけに言える話ではありませんよね。どんなところにも持っていきたい、的場さんから教わった姿勢。「たまにお茶を飲みながら、頑張ろう!!」と思いました。

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