ようこそ、ソーシャルスタンドへ

凸凹さんが未来をつくる 「子どもの意見」に耳を傾ける

あなたのまわりに凸凹した人はいますか?
もしくは、あなた自身が生きづらさを感じていませんか?

このシリーズでは「発達障害」のことを広く知ってもらうとともに、日々、発達障害の子どもと接している方々に伝えたい内容を発信していきます。

今回お話を伺ったのは、スクールソーシャルワーカーの山田詩織さんです。

「スクールソーシャルワーカー」とは?

 

障害があってもなくても生きることが難しいと感じている子どもたちがいる。そんな子どもたちが相談する先として「スクールカウンセラー」を思い浮かべる人は多いだろう。スクールカウンセラーは、本人の「心のケア」を行う。そこからもう一歩踏み込んで、本人を取り巻く環境を調整していく役割を担うのが「スクールソーシャルワーカー」だ。

 

 

生きにくさは、個人と環境の「摩擦」によって引き起こされることが多い。スクールソーシャルワーカーは、子ども、保護者、教職員などの関係者とていねいに向き合い、環境側を調整していく。たとえば、集団でいることが合わないなら、どうしたら安心して学べる環境にできるのかを一緒に考えたり、疲れたときに休憩できるスペースを確保できるよう調整したり、学校で頑張っているので、家はエネルギー補充の場所にできるように話し合いをしたり。

 

学校にいる「特別支援教育コーディネーター」は養護教諭や支援級の先生が兼任することも多く、学校内の活動になることが多い。しかし、スクールソーシャルワーカーは、学内にとどまらず、子どもが利用している多くの施設と連携する。放課後等デイサービス、病院など、各機関の方々とネットワークを組んでいるので、それぞれの場面で設定している目標を共有したり、あえて役割分担をする場合もある。山田さんが担当している学校は中学校2校とその学区にある小学校で、地域に根付きながら、子どもたちが伸びたい方向に伸びていけるよう、環境を整える。

 

スクールソーシャルワーカーへの相談は、子どもの様子を見て何らかの引っかかりを感じた教職員から来ることが多い。そのため、面談などで担任から保護者に紹介してもらい、つながることもある。

 

また、「予防支援」も行っている。たとえば、ひとり親の母が孤立しないようサポートしたり、必要に応じて経済的な支援が受けられることを保護者に案内したり、不登校になりそうな気配があれば先生方に対応をアドバイスしたり。逆に、子どもと保護者の言葉を先生方に伝えることもしている。たとえば、つらかったら15分だけ保健室で休むことをお願いすることも。

 

同じ内容を保護者から先生に伝える場合、「要望」としてとらえられ、関係がぎくしゃくしてしまうケースもあるが、スクールソーシャルワーカーが間に入ることで、「本人が本当に困っている」ということを客観的に伝えられるのだ。

 

「子どもの意見」に耳を傾ける

 

山田さんが大切にしているのは「子どもの意見」だ。

 

子どもが意見を言える場所として、「子ども会議」を開いている。会議には、本人、保護者(父も母も)、支援級の先生など、関係する方々全員に集まってもらう。その回数は1~2回のこともあれば、5回ぐらい開かれることもある。

 

たとえば、親に対して手が出てしまい、どうしてもやめられない子どもの場合。子どもの言い分は、「ゲームがほしいのに買ってくれないから暴れていた」ということ。保護者は、「20時にはゲームをやめる、という約束が守れないことが多いから、新しいものを買ってあげたくても買えなかった」。関係者が何回も集まり、それぞれの意見を整理してくことで、初めは別の人に代弁してもらっていた子どももだんだん自分自身で意見を言えるようになっていった

 

子どもはそのうち、ゲームを自主的に20時にやめたり、暴力ではなく、言葉で気持ちを伝えられることが増えてきた。いいことをしたら保護者はどんどんほめる。さらに、ゲームを20時にやめられるようサポートしていく。

 

子ども会議を続けることで、保護者の方からアイディアがどんどん出てくるようになることも。子どもと保護者が「自己決定」をした内容は、納得感が高い。

 

また、場探しも積極的に行っている。バスケットボールが好きだけれど、学校には行けない子どもの場合、夏休みに体育館を借り切ってバスケットボールをさせたり、保育士になりたいという子どもに対し、保育士の体験ができる場所を探して連れて行くことも。進路についても、サポート校を紹介するなど、多様な選択肢を提案する。カフェで働きたいという希望を持っている発達障害の子どもにカフェでのボランティアをしてもらうことも。

 

「『ソーシャルスキル』という形で学ぶより、『これをやりたいからできるようになりたい』というものがあったほうが入りやすいんですよね」

子どもと一緒に「楽しく生きられるヒント」を探すのが山田さんの役割だ。

保護者へのメッセージ

 

山田さんが関わった保護者のなかに、子どものころにほめられた体験がなく、「そのままでいいんだ」と思わなかったというケースがあった。インターネットで子どもの育て方を調べ、「あれもできていない、これもできていない」と焦る人も多いという。

 

まずは保護者が心のゆとりが持てるよう、幸せな環境づくりを目指している。

 

「子どもをここまで育ててきたということ自体がすごいことなんですよ」山田さんの保護者へのメッセージはそれに尽きる。

 

文部科学省は、スクールソーシャルワーカーを1万人(すべての中学校区)配置する目標を掲げている。それだけ、必要とされている役割なのだと思う。

私は「子どものいいところを伸ばすという意見には賛成なのだがそれ以外のことは最低限どこまでできるようにさせたらいいのか?」という、ずっと抱えていた疑問をぶつけてみた。

山田さんは「正直に言って、今の時代、電卓で解決してしまうこともある。カリキュラムには『これを学ぶ』とあるが、この内容は必要、これは不要かもという話を先生と一緒にできるといい。それは先生にとっても、新鮮な体験になるのでは?」というアドバイスをしてくれた。

子どもの状況はまちまちなので、子どもを見ながら一緒に考え、子ども・保護者・先生、みんなで成長していけるような関係性がのぞましい、とも。

私自身、子どもの支援級での過ごし方にモヤモヤを感じることが多かったが、一歩踏み込んで先生と一緒に考えていく必要があると強く感じた。

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