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こんなアートもあったんだ!見えない境界を取り払ったDIVERSITY IN THE ARTS企画展『ミュージアム・オブ・トゥギャザー』

みなさんは、美術館やギャラリーによく行きますか?
また、ボランティアに参加したり、福祉施設に関わりがありますか?

“アート”と聞いて、何を感じますか?
“障がい”と聞いて、何を感じますか?

興味のある人はもちろんのこと、こうしたキーワードになじみのない人こそ、深く考えず、まず作品を感じに来てみてほしい展示があります。

東京・青山にあるギャラリー・スパイラルホールにて行われている展示、DIVERSITY IN THE ARTS企画展『ミュージアム・オブ・トゥギャザー』(2017年10月13日(金)~10月31日(火):https://www.diversity-in-the-arts.jp/moto)。

この展示は、日本財団の『DIVERSITY IN THE ARTS(https://www.diversity-in-the-arts.jp/)』という取り組みのひとつです。

これまで何度か、チャリツモでも記事を取り上げています。

筆者も早速企画展を訪問してきました。

そこで感じたのは、健常者と障がい者、そしてアートと日常。
なんとなく普段存在している、見えない壁が取り払われたような、心地の良い空間でした。

エンジョイ・トゥギャザー!障がいがあってもなくても楽しめるアクセシブルな展覧会

公共の場所が万人にとって過ごしやすい場所であるとは限りません。特に、『健常者』に分類されない人たちにとっては、心地が良くないと感じることは多いでしょう。しかし、美術館など、心を落ち着かせて作品を鑑賞したい場において、もうちょっと多様な人に対して配慮がなされていたら、なんだかとっても素敵じゃないでしょうか?

『ミュージアム・オブ・トゥギャザ-』では、たとえ、世の中で障がいと呼ばれるものがある人でも、みんなが展示を楽しめるようにさまざまな工夫が施されています。車いすの人でも作品を楽しめるように、階段のあるところに木で作られたスロープが設置されました。作品を置いたテーブルは、車いすでも十分届く高さに設計されています。

◇今回の展示の為に特設されたスロープ

 

◇スロープがあることで、車いすだけでなく、ベビーカーの方も利用しやすくなっています。

 

◇車いすの方が展示を楽しむ様子

作品全体も、車いすからの目線でも楽しめるように、全体的に低めに展示されています。といっても少し下にあるだけなので、健常者である私が見ても、違和感はなく、むしろ作品が手の届くところにあるような気がして、普段と違った目線で作品を感じることができて新鮮でした。

その他、目の見えない人のための無料音声通訳があったり、手で触れることのできる展示が充実していたり、そして人混みに疲れたときに静かな空間で休憩できる『クワイエット・ルーム』が準備されています。

◇手で触れる展示にはマークがついています

 

◇こちらの作品は、元々視覚障がい者の方の教材でした。触ることで、人体について学びます

 

◇白いカーテンを開けた先にある、クワイエットルームはこんな感じ

会場の至るところには、ユニバーサル研修をうけたスタッフの方が、作品の説明をしながら、来場者の鑑賞のお手伝いをしていました。

また会場内のカフェでは、目の見えない人でも楽しめる特別メニューが提供されています。メニューは、視覚障がいをもつ人へのインタビューを基に開発されました。

平皿に料理がぽつんと置いてあるものは食べにくい。
見えないので、最終的に食べ物を混ぜてしまうことが多い。
香りの強いものは印象に残る。
食感や味が変わるものは食べていて面白い・・・

さまざまな声から生まれたランチメニューは、鈴がついたふたで閉ざされた状態で提供され、ふたが開いた瞬間、音と香りがお出迎え。食材を混ぜながら、食感を楽しめるように作られています。

ランチセットは1日限定15食、デザートは一日限定20食。是非この機会に、視覚以外で食事を楽しむ経験をしてみてはいかがでしょうか。

◇一日限定20食のデザート

 

◇メニューも点字になっています。

https://www.diversity-in-the-arts.jp/moto#tab-food

『特別すぎない』アート。寄り添うように在る作品たち

さて、この展示に参加しているアーティストはどんな方たちなのでしょう。

作品のキャプションを見ると、とてもシンプル。作家名や画材など、必要最低限の情報にとどまっています。

エイブルアートやアウトサイダーアートと言われるように、障がいがある人によって作られた作品もあれば、それとは全く関係のない、モダンアーティストの作品もあります。そこには、あえて情報を与えないことで、作家の情報に頼らず作品を鑑賞してもらうことを狙った、キュレーターの意図があるのです。

実際に展示を見ると、キャプションを見るまでもなく受け手に対して強い印象を与える作品が多くありました。いざキャプションを見ても、作家のバックグラウンドはわかりませんでしたが、印象的な作品は、たとえ作家についてよく知らなくても、記憶に残っているものだと言えるでしょう。小規模な会場なので、作品同士の距離も近く、みんなが対話をしているようです。作品と作品を完全に仕切ってしまうのではなく、囲っている段ボールの窓から、他の作品感じることができるようになっています。

ここで気がついたことは、段ボールが多いこと。作品の仕切りや、休憩時の椅子まで、よくみると段ボールでできています。

日本財団の担当者の方に伺ったところ、段ボールというのは、障がいがあるアーティストの方にとって、とても身近な画材となるものなのだそう。日常とアートの世界の境をなるべくなくすことで、アートになじみのない人も出入りしやすい環境を作り上げているそうです。

これは全くの偶然なのだそうですが、招聘アーティストとして展示されている香取慎吾さんの作品のひとつも、段ボールをキャンバスにしているもの。

なるほどそう思って作品を見てみると、身近な素材を使ったものが多くみられました。

◇新聞広告で作られた作品

 

◇こちらの動物たちは、なんと落ち葉でできています

企画展は10月31日(火)まで。ちょっと新しいアート体験をしに、青山まで足を運んでみてはいかがでしょうか。

DIVERSITY IN THE ARTS企画展『ミュージアム・オブ・トゥギャザー』(2017年10月13日(金)~10月31日(火):https://www.diversity-in-the-arts.jp/moto)。

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