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アートから見る多様性 『Diversity in the Arts』フリーペーパー創刊

アウトサイダー・アート、アールブリュット、プリミティヴィズム、エイブル・アート…

みなさんはこうした言葉を聞いたことがあるだろうか。それぞれ細かく定義は異なるものの、平たく言うとアウトサイダー(アートの教育を受けていない、社会的弱者によるアート)のことを指す。

日本財団の『DIVERSITY IN THE ARTS』という取り組みを語るには、今あげた概念を知っていると理解しやすいように思う。この取り組みは、日本財団の「障がい者と芸術文化」の活動領域に含まれ、障がいを持った人のアート活動やその文化を社会に発信しながら、新たなプラットフォームを創ることを目的としている。
 
東京オリンピックとパラリンピックが行われる2020年に向け、数々の催しを企画しており、今年の10月には、東京のアートギャラリー、青山スパイラルホールにてアート展の開催を予定している。
 
この度、この活動のフリーペーパー『DIVERSITY IN THE ARTS PEPAR』が創刊された。

“障がい者”の生み出すアートに触れる

幾重にも重なる線で描かれ、こちらに何か訴えるような眼差しがひときわ目を引く表紙。この表紙を描いたのは岡本俊雄さんである。彼は自閉症を患っており、『やまなみ工房』に所属して創作活動をしている。やまなみ工房では彼のように、一般社会では生きにくい人々が、芸術を通して幸せを見いだしている。
 
フリーペーパーをめくっていくと、数々の”アウトサイダー”によるアート作品が並んでいる。彼らの作品には迷いがない。作者の中には言葉を話せないひともいるそうで、まるで言葉にならない”声”が形になったように感じられる。
 
やまなみ工房の施設長曰く、「彼らのアートは、アートが目的ではない」そうだ。評価や名声など、誰かのための創作活動ではなく、ただ彼ら自身のために創られた作品だからこそ、エネルギーがあふれ出ているのかもしれない。
 

アートの中で輝く非凡さ。アートは社会で何ができるのか

創刊号で一番ページが割かれているのは、日本財団会長である笹川陽平さんと、日本財団パラリンピックサポートセンターの顧問を務めるマツコ・デラックスさんの対談である。そこではアートを通して見る“多様性”について語られている。
 
我々人間と、障がい者と健常者に分けるものは何なのか。そして、人間を男と女に分けるものは何なのか。突き詰めれば、どんな男性の中にも、1割2割は女性的なものがあるかもしれない…。
 
「いろいろと区切ってきたけど、それではもう立ち行かなくなってきたことにみんな気づきだしたんだよね。その結果として、多様性という言葉を使いはじめた。」と、笹川さんは言う。
 
対談を通して、二人の感じる今の社会のあり方の違和感を読み取ることができる。宗教や国家、性別などいろいろなものが人間を分断しているが、本当はどうなのだろう。私たち人間は、本質的には同じホモ・サピエンスであると同時に、みんな違う個人なのだ。我々は皆、多かれ少なかれマイノリティ性や非凡さをもっているのではないか。
 
その非凡さを伝える手段として、アートが存在している、とマツコさんは述べる。
 
DIVERSITY IN THE ARTSで取り上げられているのは、障がいをもつアーティストである。彼らにとってのアートは“非凡さを伝える手段”となり得るが、そもそも凡とは何なのか。障がいとは何なのか。
 
まっすぐに生きる彼らの作品へ触れ、社会とアートについて考える入り口として、まずこのフリーペーパーを手にとってみてはいかがだろうか。

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