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凸凹さんが未来をつくる 「人としゃべらなくてもいいんだよ、一人でいてもいいんだよ」

あなたのまわりに凸凹した人はいますか?
もしくは、あなた自身が生きづらさを感じていませんか?

このシリーズでは「発達障害」のことを広く知ってもらうとともに、
日々、発達障害の子どもと接している方々に伝えたい内容を発信していきます。

今回お話を伺ったのは、自閉症スペクトラム障害の公務員、Bさんです。

「はまることにはとことんはまる」才能

 

名古屋で働く30代半ばのBさん。

大人になってから「自閉症スペクトラム障害」だとわかった。

 

Bさんの強みは、はまるものにはとことん「はまる」こと。

そのことで頭がいっぱいになり、毎日考えてしまう。

仕事の最中でも、業務に支障をきたさない範囲で考えているという。

ロードバイクにはまったときは、スポーツ経験がないにもかかわらず

北海道の道東エリア一周やびわ湖一周を実現してしまった。

「『とことんはまる』こともひとつの才能。

それにより知識や経験も増え、得意になる」

Bさんはそう考えている。

診断にいたるまで

しかし、そう思えるまでつらい思いもたくさんしてきた。

 

子ども時代はまわりになじめず、いつも違和感を抱いていた。

まわりの人との「フリートーク」が苦手で、

どう答えたら正解なのか考えてしまい、いつも緊張していた。

 

勉強は、「誰にも負けたくない」という思いからがんばり、成績は優秀。

そして大学を卒業後、一般企業に就職した。

ところが、同僚とのコミュニケーションが苦手なうえ

仕事の場面でも、緊張して見当違いなことを答え、その結果怒られる

というパターンを繰り返した。

 

その後、公務員に転職したBさんは

4年間は勤めるものの、休職。

理由は、事務・電話応対・接客のマルチタスクを求められるが

集中力の切り替えが苦手でうまくいかなかったこと、

窓口でのお客さまの怒りや無理な要求がつらくなってしまったことだった。

 

休職前から心療内科には通っていたが、その病院が自分に合わないと感じ、

違う病院に行くようになった。

そこで発達障害の診断を勧められ、精神科に足を運ぶ。

結果は「自閉症スペクトラム障害」。

発達障害のことはSNSで知っていたが自覚は全くなく、驚いたという。

その後、障害者手帳を取得し、復職する。

職場でのさまざまな配慮

 

復職後は、職場でさまざまな配慮を受けながら働いている。

Bさんは長時間人と一緒にいることが苦手なので、

宴会のある日は1時間早退し、

カフェなどで一人で過ごしてから参加させてもらっている。

また、接客や電話応対の免除、

すみっこが落ち着くのでいちばん隅の席にしてもらう、

音が気になるので、業務中に音を立てる人から遠い席にしてもらう、

言い方がきつい人とは直接話さなくてもいいように上司が間に入る、

などの配慮もある。

「発達障害とわかって救いだった」

 

Bさんは、以前は

「自分は幸せなのに甘えているのではないか、努力が足りないのではないか」

と自分を責めていた。

しかしそれは、発達障害が原因だったのだ。

理由がわかり、晴れやかな気持ちで60代の両親に報告したが、

悲しそうな顔をされたと言う。

「自分の子どもが障害者なんて…」

そんな気持ちになったのだろうとBさんは推測する。

発達障害への認識に対する親世代とのギャップを感じている。

 

Bさんには、兄と弟がいる。

二人とも、周囲とのコミュニケーションがうまくいかず、

高校を中退したり、仕事を辞めてしまったり。

そのため、Bさんは

「自分は勉強をがんばっていい高校に行かなくては」と

母の期待を背負い、苦しい思いをした。

のびのびとした子ども時代ではなかった。

本当は絵を描くことが好きだったが、

母から勉強やピアノをやりなさいと言われ、それに従っていた。

がまんして「いい子」にしていたのだ。

これからの社会への期待と願い

 

Bさんは発達障害の人たちに、

「それぞれの特性を活かしてのびのびと生きてほしい」と願っている。

Bさんには注意欠陥・多動性障害(ADHD)の友だちがいる。

その方は絵さえ描いていれば幸せで、

過度に集中するため、飲まず食わずで制作に没頭する。

ずっと一人でも平気だ。

それでも、その作品は素晴らしいという。

 

一口に「発達障害」と言ってもその状態は人によっていろいろで、

マニュアルはない。

そのため、配慮する側も大変だと認識している。

それでも、発達障害者の親やまわりの人たちには理解をしてほしいし、

差別ではなく配慮をし、本人の「特性」を守ってほしいと考えている。

 

Bさんが子どものころは「発達障害」という言葉を聞いたこともなかった。

子どものころ

「人としゃべらなくてもいいんだよ、一人でいてもいいんだよ」

と言われていたら。

そうすれば、社会人になって無理をしなくて済んだ、と思う。

 

今の社会は発達障害に対して経過段階で、世の中に浸透していない。

10~20年後には、対応方法も広まり変わっていくだろうとBさんは言う。

「いま小さい子どもたちが大人になったころには、

きっといい方向に進んでいるだろう」

Bさんはこれからの世の中に期待を寄せる。

 

Bさんが苦手なことは家事で、
仕事と趣味でエネルギーを使い切ってしまうため、
家事の代行を頼んでいるそうです。

また、挙動不審に見えないようにふるまうことで消耗するため、
家族旅行でも、部屋は別室。
同僚にランチに誘われ快諾するも、内心「いやだな」と思うことも。
しかし、365日24時間一人でいたいわけではないので、
そのバランスを探っている最中だといいます。

自分の特性を正しく理解して対応し、
職場には適切な配慮をお願いしているBさんの姿は、
発達障害の大人のいいモデルだと思いました。

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