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国際公共事業の保健医療コンサルタント集団:HANDS

※この記事は、2013年8月に取材した記事の再掲になります。

 

「ちょっとした教育や意識で守れる命がある」

 

「川の水はそのまま飲まない」

そんな初歩的な知識・意識がないために命を落とす人が世界にはたくさんいる

例えば、下痢で死亡する5歳以下の子供が世界には年間約150万人(WHO調べ)いると言ったら「どうにかしたい」と思う人は多いのではないだろうか

 

「がんのように、どんなに医療システムが発達しても、予防や治療が困難な病気と違って、下痢や栄養不足が原因で死亡する子どもの命は、ちょっとした教育や意識の改善で救うことができる」

 

そういう思いで活動している団体が、HANDSだ

正式には、Health and Development Service

現在の代表理事でもある中村安秀医師が中心となって、2000年に活動を開始した。

 

HANDSはその活動のダイナミズムとプロフェッショナリズムの点において知る人ぞ知る団体である。

 

「保健医療の仕組みづくりと人づくりを通じて、世界の人びとが自らの健康を守ることができる社会を実現する」をミッションとして掲げ、

この13年間でブラジル、ケニア、インドネシア、アフガニスタン、スーダン、ホンジュラス、エジプト、フィリピン、フィジー、トンガ、バヌアツ、ジブチ、日本の世界13カ国で現地住民の健康を改善するプロジェクトに携わってきた。

 

しかし、地理的な広がりもさることながら、「健康」を核としながらも農業の指導を行うなど活動も非常に幅広い。活動の全体像のイメージをより理解する為に、事務局長の横田さん、広報の篠原さんにお時間をいただきお話を伺った。

 

「保健医療の仕組みの課題を明確にして、限られた予算で最大限の効果を出すべく、その仕組みの改善を図る。そしてそれを維持する人を育てる」

 

活動の内容を理解するうえで、ミッションの意味をきちんととらえることはスタート地点として必要であろう。

 

ミッション:「保健医療の仕組みづくりと人づくりを通じて、世界の人びとが自らの健康を守ることができる社会を実現するために行動します」

 

「保健医療の仕組みづくりと人づくり」とは。

保健医療とは、HANDSの活動実績に沿って言えば、病気を予防するための活動を含む、治療・看護などのすべてを指す。

 

「仕組みづくり」とは、必要な病気予防のための保健知識やサービス、病気を治癒するための治療サービスなどを、誰もが公平に、且つ持続的に受けることができるようにすることである。例えば、誰かの寄付によって単発の予防接種が行われることではなく、毎年同じように予防接種が提供されるような体制を整えることもその一例である

 

この体制を整え恒常的に維持していくためにはそれを担う人が必要であり、それが「人づくり」である。

 

「自らの健康を守ることができる社会」とは。

すなわち、保健医療の仕組みが100%現地の人によって維持・管理される状態である。

こうなれば援助の必要性はなくなる。

 

簡単に纏めるとこのようになる

 

「でもミッションの解釈は未完なんですよ」と、横田さん、篠原さんは声を揃えて言う

「あえて、活動の幅を狭めないための言葉を選んだという背景もあります」とも。

 

どういうことか。

 

HANDSは「健康」「仕組みづくり」を活動の切り口にしている。

しかし、それらに連なる問題は多岐に渡るうえ、根深い

 

仕組みには諸々の資源が必要であり、それぞれが持続的に関係しあって成立する

予防接種に関連するものでも、最低限以下の条件は必要だ

– 毎年の予防接種を実施する予算

– 実施要領の策定や予防接種の配布等、ロジスティクスを管理する機関

– 実際の予防接種を実施する医療機関・医者・その他医療スタッフ

– 予防接種のタイミングや履歴を管理する情報システム

– ワクチンを適切に配布するためのコールドチェーン、そのための道路や適切な輸送手段

 

そしてこれらをうまく国や自治体がマネジメントしていく必要がある。

日本の具体例で置き換えれば、厚生労働省が大枠の方針や戦略/予算等を示し、各地方自治体がそれぞれの課題や資源を勘案した施策を立案し、保健センター等の施設レベルがそれを実行するという流れになろうか。

ここで大事なことはこの連動の中で個人名等具体的な顔が見えないことである。

言い換えると中の担当者が代わっても「持続」するようにする。そして一定の質や基準を保つようにする。これで初めてシステムが完成する。

 

「それに、現地の方は衛生環境によって病気にかかってしまうことがあることや、予防接種によって防げる病気があるといった知識や常識自体をもっていない場合も多くあります」と篠原さん

この場合、「衛生的な環境や、予防接種の必要性を広める教育」も必要となろう。

 

「健康になるための知識(または衛生環境の改善)よりも、生活していく収入を得る方が大事という人もいます」

貧しい暮らしのままでは、中長期的な意味での健康の改善に取り組めないのだ。冒頭で言及した農業支援は、収入向上と栄養改善を同時にはかるために始めた活動だ。

 

単純に「保健医療」というキーワードから、この活動にかかわっているかたは、「善意のある医者」の集団を想像していたが、より「コンサルタント」に近いかもしれない

現地にある保健医療の仕組みをより良い状態に機能させるために、いま直面している課題を明確にする

限られた予算の中で、その課題を解決する為に、最も効果的な施策を定義する

その際には、その国の政府や地域の行政の方針に沿い、関係者と協働していく。

持続可能な仕組みにするには、主役はあくまで現地の人たちというスタンスを貫く

保健医療の仕組みを構築しながら時に住民の生計にも目を配る。

保健医療の仕組みを稼働させるにあたって出てくる障害には優先順位を考え取り組む

 

「保健医療の仕組み」を各国の事情に合わせ機能させていくためには、さまざまなレベルのタスクといろいろなフィールドからの力の結集が必要なのだ。

「保健医療の仕組みづくりと人づくりを通じて、世界の人びとが自らの健康を守ることができる社会を実現するための行動」

 

インタビューを踏まえてHANDSのミッションを改めて読むと、これは途方もなく大きなプロセスであることが感じられる。

 

一方で、「健康」「仕組みづくり」をたぐっていくと「国造りにかかわる」ようなスケールの大きなやりがいがあることもまた感じられた。

 

ミッションの解釈が届くところまで、とことん目標を追いかけるHANDS

今後もどのような活動をされていくのか注目していきたい

 

HANDS  http://www.hands.or.jp/

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