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2016.02.27.Sat

構造的問題に目を向けるべき、支援だけではなく、規制を含めた変革の為の活動に意識を向けること 東京外国語大学大学院「平和構築・紛争予防講座」担当教授 伊勢崎賢治 さん

チャリティや寄付に取り組む組織や仕組みは増えているものの、様々な問題が根本解決に至っていない。
 
様々な問題の中の一つに「貧困(poverty)」があることは間違いない。今まで「貧困(poverty)」が根本解決に至らなかったことを考えると、「チャリティ活動はどこか間違っていた、もしくは不十分であった」と考えるのが自然なのではないだろうか?
 
今回は、NGO・NPOに精通している東京外国語大学大学院教授の伊勢崎賢治氏に、”「貧困」に対してチャリティの果たしてきた役割・問題点”、更に、”今後チャリティに求められる役割”をインタビューでお伺いした。
 

 

現在のチャリティの姿

現状維持に寄与してしまう可能性がある

 
 

これからのチャリティのあるべき姿

構造的問題に目を向けるべき。
支援だけではなく、規制を含めた変革の為の活動に意識を向けること

 
 

≪現在のチャリティの姿が、“現状維持“の理由≫

 
チャリティの落とし穴:チャリティは現状維持に寄与してしまう可能性がある

心の片隅に置いておいて頂きたいのは、チャリティというのは現状維持に寄与してしまうことです。

 

例えば、貧困というのは2つの捉え方があって、「事象として捉える捉え方」と「なぜ貧困が生まれるのか?構造を考える捉え方」です。チャリティという呼ばれ方をする場合、ほとんどが前者の方です。
 

 後者を考えないでチャリティをやり続けるのは貧困の維持につながります。チャリティをすることで、チャリティをした側は気が済んでしまう。構造の問題はそのままなのにも関わらず、関心もなくなって批判がなくなってしまう。

 
僕は、これは、チャリティの落とし穴と呼んでいます。

 

チャリティはセーフティーネットになっていない
 
国際協力のNGOが、勿論、非常に大事なことをしているのは事実ですが、客観的に見ると、我々が福祉として享受しているものに対して満たないものが、国際協力のチャリティ。

本来、政府が提供すべき、福祉・セーフティネットを全て賄うことは当然出来ないので、NPO・NGOは出来る限り現状の穴埋めをしている状態であることを見る必要があります。

 

資源の収奪をしている現状の上に立っているのが国際協力のチャリティ(アフリカから10貰ったら1、2しか対価を支払っていない日本)
 
同様に、国際協力におけるチャリティということを考える際には、私たちが支援している先、例えばアフリカから、我々が資源を10貰っているとすると、1・2しか対価を払っていない状況ということです。

 

「事象として捉える貧困問題」に対処するNGO・NPOなどの主体は発達した、しかし、構造的な問題への取り組みはまだまだ発展していない
 
表面的に事象としての貧困を扱うものは育ちました。国連も安全保障理事会、経済開発委員会も出来、色々なものが出来ました。しかし、先ほど述べた資源を収奪していることの豊かさを前提としている仕組みの中の取り組みでしか過ぎないです。
 
構造的な問題にアプローチするには、今までのチャリティの捉え方だけでなく、資源の収奪の仕組み「グローバル経済」を監視・規制することも大事ですし、そもそも、そのような現状を理解する必要があります。

 

≪これからのあるべき姿≫

 
例えば、国際連帯税や株取引に課税すべき!
 
国際連帯税を課して資源を10貰ったら、5くらい対価を返せるようにしたい。我々は多少、豊かさを失うかもしれませんが、今までのチャリティで何とかしようとしていたよりも、多くの成果を出すことが出来るようになるはずです。株取引取引に数%課税するだけで、数兆、京円以上の金が集まるなど、インパクトがかなりあると思います。
 
※国際連帯税とは国境を越えて展開される経済活動に対して課税し、その税収を途上国向けの開発支援などに活用することを目的としたもの。

 

アドボカシー(政策提言)をしているNPOなどに目を向けてみよう
 
 国際連帯税のような仕組みを導入することを後押ししている団体をアドボカシ-型団体(※アドボカシ-とは特定の問題について政治的な提言を行うこと)と言います。日本では、なかなか根付いていないですが、オックスファムなど日本にも様々な団体が活動しています。彼らの存在を会員になって後押しするのも、チャリティの在り方としてあってもいいかと思います。

 

チャリティを教育の中に取り入れよう
 
現状の貧困にあえぐ人たちを救う支援も必要。
 
それと同時に、今まで重視されてこなかった、構造的な問題に取り組むこともやはり必要で、重要です。
そして、チャリティは自由であり、自発的にやるべきことです。制度として、強制されるものではなく、文化として根付かないといけない。
 
最終的には構造的な問題の解決を前に進める為の文化としてチャリティを根付かせる為には、教育が大事です。
チャリティは、倫理ではない。どちらかと言うと、「世界のことを知る。その中からissue(突破口)を開いていき、問題解決のヒントを探すこと。」それが大事だと思います。

 

でも、まずは、私たちが豊かであることも大事。そして外に出てみよう。
 
でもチャリティをする為には、前提として、僕たちが豊かでないといけない。上向き感があることが大事。チャリティに目を向けることが出来るのは、基本的には自分たち自身が幸福であることが必要だから。
 
その上で、想像力が大事かもしれない。国内はこれからもう少しチャリティが機能するかもしれない。身近に困っている人を助ける、それがチャリティの原点だと思うから。でも、理想的なのは、周りのことも考えながら、想像の及ばない苦しんでいる人のことにも気持ちが向くことがだと思います。
 
そういう意味では、留職、それに可能性を感じています。
 
※留職とは、「留学」のもじりで、企業に所属する人材がグローバル感覚を養うために現在の組織をいったん離れて、一定期間、新興国など、海外で働くことをいいます。代表的な例が、「留職」プログラムを提供しているNPO法人クロスフィールズです。
 
これも教育の一貫だと思います。外に開いて、商いをしていく。そういうアプローチで想像の及ばないことを想像出来るようになる。知らなかったら外に行こうという意思も発生しないし、チャリティをしようという気持ちにもなりづらいから。
 
 

≪スタッフが学んだこと≫

 
国際連帯税や株取引に課税するという考えが非常に印象に残っています。資源や株取引などに課税することで、莫大なお金を集めることができ、これは、今までのチャリティ活動では、与えることのできなかったインパクトが見込めます。今後非常に注目されるべきものであり、大企業を中心に国際連帯税や株取引に課税をする社会なって行く必要があると強く感じました。
 
 
「事象として捉える貧困問題」に対処するNGO・NPOなどの主体は発達した、しかし、構造的な問題への取り組みはまだまだ発展していない」この主張に非常に興味を覚えました。国連やその機関の発達や活動により貧困は、改善されつつあると勘違いしがちですが、実際には、本質的に改善されておらず、我々は、今後貧困問題に対して構造的な問題への取り組みをする考えを持ち、それを解決できるアプローチをとっていくことの重要性を強く感じました。

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